著者
田中 良明 斉藤 勉 藤井 元彰 斉藤 友也 前林 俊也
出版者
日本大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

難治性悪性腫瘍に対する放射線治療において、進行固形癌や再発癌は通常の放射線照射単独では十分な治療効果が得られない場合が多い。そこで、三次元原体照射による優れた線量分布と、放射線増感作用を有する温熱療法併用することにより、局所一次効果と臨床症状に改善が得られるかを検討した。対象は平成15年1月以降の4年間に温熱併用放射線化学療法を行った消化器系の癌腫25例(男/女=18/7、平均年齢59.4歳)で、内訳は、膵癌8例、胆嚢癌2例、胆管癌4例、小腸腫瘍2例、S状結腸癌2例、直腸癌7例で、現症別では局所進行・手術不能12例、術後再発12例、その他1例である。放射線治療は可能な限り三次元原体照射、多門照射を適用し通常分割で50〜60Gy、温熱療法はRF波誘電加温装置(Thermotron-RF8)を用い、病巣部41℃、30分以上で週1回、計4回以上を目標に実施した。化学療法は膵癌にはGEM(800-1000mg)、結腸・直腸癌には5-FU/LV、UFT、TS-1もしくはFOLFOXを適用した。結果は、治療内容について予定の70%以上実施できた症例を完遂例とすると、完遂率は68%(17/25)で、臓器別では膵癌(7/8)、結腸・直腸癌(7/9)で完遂率が高かった。画像診断や臨床症状による治療効果は、著効7例、有効12例、無効6例であり、臓器別の奏効率は膵癌(6/8)、結腸・直腸癌(8/9)で高く、胆道癌(4/6)、十二指腸・小腸癌(1/2)では相対的に低かった。完遂率別の治療効果は完遂例で著効6、有効10、無効1(奏効率94%)、非完遂例で著効1、有効2、無効6(奏効率38%)であり、完遂例の方が奏効率が高かった。臨床的に疼痛の軽減、異常分泌物の排泄減少など、QOL(生活の質)の向上が得られる例が多かった。有害事象として、2例に急性胃潰瘍がみられたものの、局所の疼痛、熱感などは軽微であった。以上、本法により奏効率の向上と一次効果持続期間の延長ならびに患者のQOLに改善がみられ、難治性腫瘍に対して有効な治療法であることが明らかとなった。