著者
前田 大輝 藤井 健作 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.180-189, 2004-02-01
参考文献数
15
被引用文献数
10

マルチチャネルシステムで用いられる参照信号は一般には互いに強い相関をもつ.この相関は適応フィルタの係数推定を難しくすることから,通常は参照信号間の相互相関を減少させる前処理が加えられる.しかし,その前処理は参照信号をひずませることに等しく,そのひずんだ参照信号の未知系への送出はシステム本来の動作に支障を来す.その一方で,適応フィルタの係数推定には参照信号間で無相関となる成分の存在が不可欠であり,その割合を増加させる前処理は収束特性の改善に欠かせない.本論文では,その前処理を加えた参照信号を未知系に送出せず,適応フィルタの係数推定にだけ用いるアルゴリズムを提案し,その実用化に際して必要となる設計条件を明らかにする.すなわち,推定誤差が増大しない条件と,本アルゴリズムを特徴づける,参照信号間の相関を低減する係数の最適値を導き,その有効性をシミュレーションによって確認する.本提案アルゴリズムによれば,システム本来の動作に影響を与えることなく,収束特性の改善を図ることができる.