著者
岡田 博美 六浦 光一 榎原 博之 大月 一弘 棟安 実治 和田 友孝 堀井 康史
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

本研究は、主に車両間/モバイル端末間情報通信に特化した未来型ネットワーク構築技術として、基地局や情報センタなどの情報通信インフラを用いず、数Km程度のエリア内で移動中の車両やモバイル端末間で、アドホックな通信ネットワークを瞬時に構築し、リアルタイム交通情報やホットな地域情報、事故・災害情報などを、不特定なユーザ間で必要に応じて自由に交換する、新たなネットワーク機能の実現である。これは移動中の未知で不特定なユーザ間で情報交換し各種の周辺情報を即時に獲得しようとするものであり、以下の解決すべき技術的課題が挙げられる。A)高速移動する車両問で瞬時にネットワーク構築。B)エリアが不特定で時々刻々変化するため、ポータルサイトやWebサイトを利用不可。C)問い合わせる相手が不明。URLやアドレス・車両番号が未知。D)文書や音楽・映像などタイトル・キーワード類で識別される情報とは異なり、必要とする発生事故情報や車両情報などを明確に定義不可。本研究者らは、この課題の解決を目的としてコンテンツ指向型通信という斬新な情報通信方式を提案し、方式動作アルゴリズムの考案・開発を行った。具体的には、1)周辺を走行する車両間で即時に位置情報を交換し、車両問の衝突回避を行う、2)車両一歩行者間で同様の情報交換を実現し歩行者交通事故を劇的に減少、3)近辺の道路トラピックを各走行車両がリアルタイムでモニタし、相互に告知、4)突発的な地震・火災やテロ・銃乱射などが発生した場合、現場近辺に居合わせた人々の行動を情報通信でモニタし、その発生や避難・救助などを即時に表示、を可能とするシステム開発を行った。アルゴリズム開発の多くはコンピュータ上でのシミュレーションで検証したが、車両間通信ならびに車両一歩行者間通信については複数の実車両を用いて実装化し、実証実験により動作確認とその有効性の検証を行った。
著者
田口 亮 棟安 実治 雛元 孝夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1817-1825, 1996-11-25
被引用文献数
2

画像信号等の突発的な変化を含む非定常信号が加法雑音によって劣化している場合,その復元には非線形フィルタが有力である.本論文では,階層型ニューラルネットワークを用いて,混合雑音(ガウス性雑音とインパルス雑音の混在雑音)が重畳された画像の復元を目的とする新しい非線形フィルタの一手法を提案する.まず,メジアンフィルタと線形(平均値)フィルタを組み合わせたプロトタイプフィルタを提案する.次に,プロトタイプフィルタがネットワーク構造を用いて表現することが可能であることを示し,そのネットワーク表現を階層型ニューラルネットワークと解釈することにより,メジアンニューラルネットハイブリッドフィルタ(MNNH)へと拡張する.MNNHフィルタは誤差逆伝搬アルゴリズムにより学習可能である.プロトタイプフィルタにおいても混合雑音除去性能は高いが,MNNHフィルタでは,処理対象信号(原画像,加法雑音)の情報が得られた場合,その情報を反映させ,フィルタ性能を更に向上させることができる.最後に,種々の適用例を通じて,MNNHフィルタの有効性を示す.
著者
藤井 健作 岡 竜一 斎藤 直也 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.874-887, 2009-11-01
被引用文献数
10

音響エコーキャンセラにおいて適応フィルタの係数は,外乱として働く近端話者音声の重畳(ダブルトークと呼ばれる)によって大きく乱される.このダブルトークによる乱れは,エコー経路変動とダブルトークを識別し,前者と判断されたときに大きく,後者と判断されたときにステップサイズを小さく設定することによって抑制できるとされている.しかし,その識別を素早く,また確実に実行することは難しい.本論文では,その識別を行わずに適応フィルタの係数を更新しても推定誤差が安定かつ素早く低減できるステップサイズ制御法を提案する.本制御法の特徴は,別に用意した少ないタップ数の副適応フィルタに大きなステップサイズを与えて得られた残差信号を外乱とみなして利用する点にある.この副適応フィルタによって得られる残差信号は急速に減少し,そのパワーは外乱パワーに素早く漸近する.したがって,そのパワーを外乱パワーとみなしてステップサイズを制御すればエコー経路変動においては大きなステップサイズが,ダブルトークにおいては小さなステップサイズが自動的に設定されることになる.
著者
藤井 健作 棟安 実治 大賀 寿郎
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.3, pp.299-305, 1999-03-25
参考文献数
17
被引用文献数
48

Filtered-x法を適応アルゴリズムとする能動騒音制御装置では通常, その起動に先だって誤差経路系のインパルス応答を観測し, それを誤差経路フィルタの係数として与える処理が実行される. 当然ながら, そのインパルス応答が起動後において変化することは十分に想定される. その変化は誤差経路フィルタの係数との差を拡大し, 騒音制御動作を不安定にする. 本論文では誤差経路フィルタ係数の算定を必要としない騒音制御フィルタ係数の更新法を提案する. ここでは, 騒音制御フィルタに二つの異なる係数の組を与えたときに騒音検出マイクロホンから誤差検出マイクロホンに至る系は騒音伝達系と誤差経路系のインパルス応答を未知数とする二つの独立な方程式を成立させることが利用される. 騒音制御フイノレタの係数はこの連立方程式を繰り返し解くことによって更新される.
著者
佐用 敦 梶川 嘉延 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.216, pp.7-12, 2010-09-28

本稿では発話に伴う口唇変化を利用した生体認証システムにおける識別器生成手法について述べる.口唇変化を利用した生体認証は口唇形状(身体的特徴)と発話に伴う口唇変化(行動的特徴)を用いて個人認証を行い,また他の生体認証のように特殊な機器を必要とせず,口唇領域を抽出するカメラのみで構築が可能である.これまで,口唇領域の小領域(セル)内から抽出した特徴量を用いて生成される識別器を用いた認証システムを提案してきた.従来システムにおける識別器は微小な口唇変化に対して頑健である.しかし,従来の識別器生成手法では認証に用いる複数の特徴量が一律に取り扱われているため,認証に有効でない特徴量が認証に悪影響を及ぼす可能性があると考えられる.そこで本稿では,AdaBoost学習から得られた信頼度によって各特徴量に重み付けを行う識別器生成手法を提案する.各特徴量に対して重み付けを行うことにより,認証に有効な特徴量ほど認証に影響を与えることができると考えられる.そして認証実験を通して,提案手法の有効性を示す.
著者
前田 大輝 藤井 健作 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 = The transactions of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers. A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.2, pp.180-189, 2004-02-01
参考文献数
15
被引用文献数
10

マルチチャネルシステムで用いられる参照信号は一般には互いに強い相関をもつ.この相関は適応フィルタの係数推定を難しくすることから,通常は参照信号間の相互相関を減少させる前処理が加えられる.しかし,その前処理は参照信号をひずませることに等しく,そのひずんだ参照信号の未知系への送出はシステム本来の動作に支障を来す.その一方で,適応フィルタの係数推定には参照信号間で無相関となる成分の存在が不可欠であり,その割合を増加させる前処理は収束特性の改善に欠かせない.本論文では,その前処理を加えた参照信号を未知系に送出せず,適応フィルタの係数推定にだけ用いるアルゴリズムを提案し,その実用化に際して必要となる設計条件を明らかにする.すなわち,推定誤差が増大しない条件と,本アルゴリズムを特徴づける,参照信号間の相関を低減する係数の最適値を導き,その有効性をシミュレーションによって確認する.本提案アルゴリズムによれば,システム本来の動作に影響を与えることなく,収束特性の改善を図ることができる.
著者
工藤 天志 正野 隆文 棟安 実治 花田 良子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CST, コンカレント工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.284, pp.37-40, 2010-11-11
被引用文献数
1

携帯電話を用いた印刷画像からの情報検出が注目されている.本稿では,携帯電話で画像を撮影する際に起こるレンズ歪みの補正法の改善について述べる.従来手法では,あらかじめ決められた範囲の離散値を歪み係数の候補として,各値に対する回帰直線の誤差を求めて歪み係数を決定していたが,多数の候補点について探索を行うため処理に時間がかかっていた.そこで,歪み係数の推定に黄金分割による直接探査法を用いることで,処理速度の向上を図る.また,歪み係数の推定を高速化できたため,より歪み係数の推定精度を向上するため,補正に利用する辺を従来手法の上辺,左辺のみから,すべての辺を考慮する手法を提案する.
著者
岡田 博美 和田 友孝 六浦 光一 大月 一弘 榎原 博之 棟安 実治
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は,情報通信機器の未搭載車両を考慮した上で、衝突回避支援システム(VCASS)搭載車両が走行中の周辺状況の認識とその情報広報を自動的に行うことにより,安全な道路交通を可能とする次世代型システムの開発を行った。研究結果をまとめると以下のようになる。1)非情報化車両の搭乗者のもつ携帯端末に、VCASS機能を代行するシステムを装備し、車両間衝突回避を実現するS-VCASSを開発し、その有効性を実験で確認した。2)歩行者の動きを追尾し、位置予測を行うことにより車両との事故回避支援を行うP-VCASSを新たに開発した。3)関連要素技術として、RFIDシステムを用いた迅速で高精度の測距・位置情報獲得方式として新たにCRR方式、S-CRR方式を開発した。
著者
工藤 天志 花田 良子 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.108, no.461, pp.19-24, 2009-02-26

近年,Webを大規模な画像データベースとみなした種々の画像検索システムが開発されている.本研究は画像をキーとして,画像の統計的な特徴量をもとに類似画像集合をWebで検索し,同時にその類似画像に付随するテキスト情報をユーザに提示することで,対象画像のより詳細な情報を得るシステムを開発することを目的とする.ここでは画像検索システムの開発にあたり,その基本的な機能である自動画像分類のための特徴量の検証を行う.
著者
難波 仁 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. EA, 応用音響 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.62, pp.49-54, 2007-05-17
被引用文献数
1

本稿では,POC(Phase Only Correlation)法を用いた移動カメラにおける移動物体追跡の一手法について提案する.この手法は,2画像間の変位を正確に測定できる技術であるPOCを移動物体の検出と追跡に応用している.移動カメラから移動物体を追跡する場合,背景差分などの手法[1]を用いることは困難であり,検出精度を向上することも難しい.この問題点を解決するため,POCを利用して動きベクトルを求めることで初期点を検出する手法とPOCに基づくCoarse-to-fine探査法を用いた追跡法を提案する.また,提案手法を実際に車載カメラから得られた画像へ適用し,対向車追跡を行なった結果について示し,提案手法によって良好な結果が得られていることを示す.