著者
吉野 知子 前田 義昌
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.433-438, 2014 (Released:2017-02-01)
参考文献数
23

磁性細菌は細胞内にナノサイズの磁性粒子を合成する。このナノ磁性粒子はマグネタイト(Fe3O4)からなるコアを持ち,多くのタンパク質を含む脂質二重膜で覆われている。これまでに磁性細菌の遺伝子改変技術が開発されており,組み換えタンパク質の発現ホストとしての利用が試みられている。特に,粒子膜中のタンパク質をアンカータンパク質として用いることで,機能性タンパク質をディスプレイした磁性粒子の創製が可能である。本稿では,当研究室で開発された磁性粒子上へのタンパク質ディスプレイ技術の基本戦略を概説した後に,難発現性タンパク質のディスプレイを目指した近年の取り組みを紹介する。この中では,テトラサイクリン誘導発現システムの開発や変異株の作出,更には “in vitroドッキング法” と呼ばれる方法が開発され,膜タンパク質や抗体といった難発現性タンパク質を磁性粒子上に効率的に発現させることが可能となった。これらの遺伝子組み換えツールを駆使して構築された新規機能性磁性粒子は,バイオテクノロジー分野における様々な用途に応用できると期待される。