著者
吉野 知子 前田 義昌
出版者
公益社団法人 日本油化学会
雑誌
オレオサイエンス (ISSN:13458949)
巻号頁・発行日
vol.14, no.10, pp.433-438, 2014 (Released:2017-02-01)
参考文献数
23

磁性細菌は細胞内にナノサイズの磁性粒子を合成する。このナノ磁性粒子はマグネタイト(Fe3O4)からなるコアを持ち,多くのタンパク質を含む脂質二重膜で覆われている。これまでに磁性細菌の遺伝子改変技術が開発されており,組み換えタンパク質の発現ホストとしての利用が試みられている。特に,粒子膜中のタンパク質をアンカータンパク質として用いることで,機能性タンパク質をディスプレイした磁性粒子の創製が可能である。本稿では,当研究室で開発された磁性粒子上へのタンパク質ディスプレイ技術の基本戦略を概説した後に,難発現性タンパク質のディスプレイを目指した近年の取り組みを紹介する。この中では,テトラサイクリン誘導発現システムの開発や変異株の作出,更には “in vitroドッキング法” と呼ばれる方法が開発され,膜タンパク質や抗体といった難発現性タンパク質を磁性粒子上に効率的に発現させることが可能となった。これらの遺伝子組み換えツールを駆使して構築された新規機能性磁性粒子は,バイオテクノロジー分野における様々な用途に応用できると期待される。
著者
綿貫 仁美 山﨑 薫 吉野 知子 建路 七織 山岸 美穂 林 一也 田宮 誠司
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成29年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.130, 2017 (Released:2017-08-31)

【目的】アントシアニン含有馬鈴しょ(有色馬鈴しょ)は, 色素に多くの有用な機能性が見出されているが, 調理の際に容易に分解し, 退色や変色をしてしまう。有色馬鈴しょを用いた調理後の色調は, 油調理では, 比較的色を保つことができるが, 水を介した調理で不安定となりやすい。そこで,有色馬鈴しょに対する水煮調理に用いる水の硬度差が, 有色馬鈴しょの色調にどのように影響するのか検討を行った。【方法】試料はキタムラサキ(KM), ノーザンルビー(NR), シャドークイーン(SQ)を用いた。5倍容の硫酸カルシウム(Ca)と硫酸マグネシウム(Mg)の混合溶液(Ca:Mgの重量比=2:1), およびそれぞれの単体溶液の各溶液に馬鈴しょ塊茎を4mm厚にスライスして投入, 加熱し, クリープメーターを用い加熱後の切片の最大荷重を測定した。また, 水煮処理後の切片の色調を色差計で測定し, L*, a*, b*値に示した。その後, 3%ギ酸を用いて切片より色素を抽出し, 抽出液の吸光度を測定し, アントシアニン残存率を比較した。【結果】水煮調理後の有色馬鈴しょ切片の最大荷重は, 3品種ともMg単体溶液ではいずれの硬度においても, Ca-Mg混合溶液の硬度0から硬度50と近似値を示した。一方でCa単体溶液では, 硬度が高いほど最大荷重が大きくなった。Ca-Mg混合溶液では, 硬度が高いほど最大荷重が増す傾向がみられ, Caの馬鈴しょ硬化作用が認められた。Ca-Mg混合溶液で, KM, NRでは硬度が高くなるに従いa*, b*値が小さくなる傾向があり, くすんだ色になっていった。SQでは, b*値が負に移動し, 青みが強くなった。アントシアニン残存率は, Ca-Mg混合溶液において, 3品種とも硬度が高くなるに従い, 残存率が減少する傾向を示した。硬化による切片の色素の溶出抑制には繋がらなかった。