著者
劉 佩潔 山下 遥 岩永 二郎 樽石 将人 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.211-226, 2018-01-15

近年,インターネット上でユーザの提供したレストラン情報を掲載するグルメサービスが広く利用されるようになった.本論文で対象とするグルメサービスRettyでは,ユーザはレストラン検索に加えて,レストランに対するおすすめ度や推薦記事の投稿,他ユーザが投稿した推薦記事に対するリアクション(ex.,「いいね」)等をすることができる.このリアクションの数はサービス全体の活性度を表す指標として位置づけられ,サービス運営会社とユーザの双方にとって,リアクション数の増加が望まれる.そのため,ユーザの投稿やリアクションといった履歴情報を活用し,リアクション数の増加に結び付けられる施策を明らかにするための分析モデルは意義がある.一方で,これらのユーザの投稿やリアクションは,個々のユーザの判断に行われ,多様な個人的嗜好を反映したものとなっている.これらのユーザの嗜好は多様であり,全ユーザに対して単一的な統計的法則があるとは考えられないため,その異質性を表現した統計モデルを導入する必要がある.そこで本研究では,ユーザがレストランに対して情報を掲載する行動,ならびにその他のユーザがその情報にリアクションする行動を,潜在クラスモデルによって表現する.具体的には,ユーザがレストランに対しておすすめ度を含む推薦記事を投稿する事象を「投稿するユーザ」,「レストラン」,「おすすめ度」の3つの共起ととらえ,「発信ユーザのおすすめ度傾向モデル」を提案する.さらに,記事を閲覧しているユーザが投稿にリアクションする事象を「閲覧しているユーザ」と「レストラン」,「記事を投稿したユーザ」の共起と考え,これらの事象に対して「受信ユーザのリアクション傾向モデル」を提案する.これらの評価傾向モデルとリアクション傾向モデルの両者を統合的に分析することで,リアクション数を増加させるための施策を検討する方法を示す.In recent years, social gourmet services that post restaurant information provided by users on the Internet have been widely used. On a social gourmet service, users can make a restaurant search, recommendations to restaurants, reactions (ex., "like") to the recommended articles posted by other users, and the like. The number of reactions is positioned as an indicator of the activity level of the service site, and an increase in the number of reactions is desired for both a service operating company and users. It is, therefore, meaningful to provide analytical models to exploit historical information such as posts and reactions by users and to clarify measures linked to an increase in the number of reactions. In this research, we propose the two statistical models of behaviors that users post information to restaurants and that other users react to that information introduced by latent class models. By analyzing both of the evaluation tendency model and the reaction tendency model in an integrated manner, we show a method of examining measures to increase the number of reactions.