著者
坪井 優樹 阪井 優太 鈴木 佐俊 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回 (2021)
巻号頁・発行日
pp.3G2GS2h04, 2021 (Released:2021-06-14)

企業が施策を講じる際,適切な効果検証を行い,正しい意思決定につなげることは重要な課題である.観測データから施策効果を正しく評価するために,因果推論という考え方がある.近年の因果推論では,ユーザを施策を打つ群と打たない群に分割した後,条件付き平均処置効果(以下,CATE)と呼ばれる,同じ特徴を持つユーザ群における群間の結果の平均値の差を施策効果とする.CATEにより,施策を講じることが有効であるユーザ群の特定が可能になる.ここで,CATE推定手法としてCausal Treeが提案されている.この手法は解釈性が高く,施策効果に影響を与える要因についての分析に有用である.しかし,この手法は施策対象者をランダムに選択する場合のみを対象とする.そのため,ユーザを人為的に選択し系統的な誤差(以下,選択バイアス)が生じる場合は対応できないという問題点がある. そこで本研究では,Causal Treeをベースとし,選択バイアスが存在する状況に対応したCATE推定手法を提案する.また,人工データセットを用いて実験を行い,提案手法の有効性を示す.さらに,実データセットを提案手法に適用し,実際に分析を行う.
著者
保坂 大樹 河部 瞭太 山下 遥 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1390-1402, 2019-08-15

近年,消費者のWebサイト閲覧行動は重要なマーケティング分析の対象となっている.サイトの閲覧行動を分析することで,サイト間の関係性やユーザの嗜好を把握し,Web広告の掲載やメールの配信などのマーケティング施策の最適化や効率化が可能となるためである.しかし,蓄積されたWeb閲覧履歴データ中のサイトやユーザの関係性は複雑であり,サイト単位やユーザ単位の分析が困難となる場合が多い.したがって,そのような状況においても適用可能,かつ有効な分析手法が望まれている.本研究では,単語の意味分析において良い性能を示しているWord2vecとその拡張モデルに基づき,各サイトや各ユーザをそれぞれ意味空間上の多次元正規分布として表現するとともに,意味空間上のサイトやユーザの関係性に基づいて分析を行うための手法を提案する.学習された意味空間上の表現を用いた分析により,単純な閲覧,被閲覧の関係ではなく,閲覧行動の背後に存在するサイトやユーザの潜在的な特性や関係性を把握することが可能となる.また,提案手法では,サイトやユーザが持つ性質の広がりが多次元正規分布の分散行列として学習される.最後に,提案手法の有効性を検証するために,実際の閲覧履歴データ分析に適用し,得られる結果に関する考察を与える.さらに,分散行列をサイトの閲覧者の多様性,またはユーザの嗜好の多様性として解釈し,より詳細な分析が行えることを示す.
著者
斎藤 倫克 後藤 正幸
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.145-154, 2008-06-15
被引用文献数
1

近年,初期投資の不要なインターネットビジネスとして,アフィリエイトが注目されている.しかし,アフィリエイターの約半数が月1,000円未満の収益しかあげられていないという現実がある.これは,継続的なアフィリエイトビジネスの発展を阻害するため,何らかの対策を講じる必要があろう.そのため,収益性の高さから書籍に紹介されるほどの優良アフィリエイターが,どのような方法でサイトを構築,運営しているかを分析し,優良なサイトを構築するための指針を得ることが望まれる.しかしながら,そのようなサイト運営ノウハウを体系的に分析し,理解し易い形で結果を提示する手法は確立していない.そこで本研究では,優良アフィリエイトサイトの特徴を分析し,サイト構築と運営に有効となる情報を提示するため,(1)サイト構築と運営における優良アフィリエイターのノウハウをインタビュー文章から構造化し,重要なポイント(検証要素)を抽出するための手法を提案する.(2)既存の優良アフィリエイトサイトについて,個々のサイトの特徴を明確にするため,アフィリエイトサイト用の調査項目作成方法を提案する.これら2つの側面からのアプローチにより,アフィリエイトサイトの構築と運営に役立つ分析の方法論を確立する.加えて,実際に検証要素と優良サイトの特徴分析結果を示し,本稿の提案手法の有効性を示す.
著者
後藤 正幸 石田 崇 鈴木 誠 平澤 茂一
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.97-106, 2010-08-15

近年,インターネットの普及により膨大なテキストデータからの知識発見を扱うテキストマイニングの技法が注目されている.本研究では,テキストマイニングが取り扱う問題の中でも,特に文書分類の問題を取り上げ,形態素解析後の単語の出現分布としてある確率モデルのクラスを仮定し,文書分類の性能,並びに分類に用いられる距離について漸近的な分析を行う.一般に,文書分類に不必要な単語の混入を完全に排除することは難しく,様々な重要単語の重み付け法などが提案されている.本論文で扱う最初の問題は,このような分類に不必要な単語が混入することが,文書分類に与える性能劣化の程度を把握することである.さらには,単語の出現頻度に基づく文書分類においては,個々の単語の生起頻度は少なく,多くの単語の頻度がゼロとなってしまうというスパースネスの問題がある.すなわち,このベクトル空間上で一つの文書を表す点は,ゼロを多くの要素に持つベクトルで表現される.しかし,「このような状況で,文書同士の距離による分類がある程度の分類性能を示すのは何故か」という疑問については依然として経験的な解釈が与えられているのみである.その理論的根拠を与えるため,本稿では,各要素の出現頻度を有限に保ったまま,次元数を無限大とする新たな漸近論の概念を導入することにより,スパースな文書ベクトル間の距離について解析的な性能を示す.
著者
斎藤 倫克 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.145-154, 2008-06-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
37

近年,初期投資の不要なインターネットビジネスとして,アフィリエイトが注目されている.しかし,アフィリエイターの約半数が月1,000円未満の収益しかあげられていないという現実がある.これは,継続的なアフィリエイトビジネスの発展を阻害するため,何らかの対策を講じる必要があろう.そのため,収益性の高さから書籍に紹介されるほどの優良アフィリエイターが,どのような方法でサイトを構築,運営しているかを分析し,優良なサイトを構築するための指針を得ることが望まれる.しかしながら,そのようなサイト運営ノウハウを体系的に分析し,理解し易い形で結果を提示する手法は確立していない.そこで本研究では,優良アフィリエイトサイトの特徴を分析し,サイト構築と運営に有効となる情報を提示するため,(1)サイト構築と運営における優良アフィリエイターのノウハウをインタビュー文章から構造化し,重要なポイント(検証要素)を抽出するための手法を提案する.(2)既存の優良アフィリエイトサイトについて,個々のサイトの特徴を明確にするため,アフィリエイトサイト用の調査項目作成方法を提案する.これら2つの側面からのアプローチにより,アフィリエイトサイトの構築と運営に役立つ分析の方法論を確立する.加えて,実際に検証要素と優良サイトの特徴分析結果を示し,本稿の提案手法の有効性を示す.
著者
荒川 貴紀 三川 健太 後藤 正幸
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム = The IEICE transactions on information and systems (Japanese edition) (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.96, no.8, pp.1956-1959, 2013-08-01

本研究では,学習データ中に全く現れなかった未知のカテゴリー(未観測カテゴリー)の文書が出現するような状況での文書分類問題を対象とし,確率モデルに基づいた新しい分類手法を提案する.
著者
鈴木 佐俊 小林 学 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.74, no.2, pp.63-76, 2023-07-15 (Released:2023-08-15)
参考文献数
29

家庭用電力消費量データには世帯単位の生活スタイルの情報が含まれており,耐久消費財や世帯向けサービスのマーケティングに有用な情報である.しかし一般的に電力消費量はスマートメータで主幹電力のみが検針されており,家電製品の稼働状態は推定する必要がある.従来ディスアグリゲーション技術を用いて各家電製品の電力消費量を推定する試みはいくつか研究されているが,追加センサが必要になるなど実用上はコスト面の問題が存在した.これに対し,本研究ではマーケティング用途に特化した世帯属性情報として観測された主幹電力データから家電製品の稼働・非稼働を推定することに特化した問題を定型化し,混合正規分布を用いてスナップショットでの状態推定モデルを提案する.またシミュレーション実験により,提案モデルが実用上有効な正解率を有していることを示すとともに,推定のインプットとなる機器状態の事前確率分布と提案手法との関係性について示す.本モデルは追加センサを必要としない,低いコストでマーケティングに利用可能な世帯のエネルギー消費傾向情報を得る世帯属性の推定方法であり,エネルギー事業者にとって世帯を対象とした省エネ推進等の施策のための基礎情報として活用が期待できる.
著者
大川 順也 雲居 玄道 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.31-46, 2021-06-15 (Released:2021-06-30)
参考文献数
25

一般的な質問応答システムでは,ユーザから与えられた質問を解析し,情報源となる文書集合から,質問に対する適切な回答を検索するモデル(回答文書検索モデル)を構築することで回答候補を抽出し,回答の自動化を実現している.コミュニティQAサイト(cQAサイト)における質問・回答文書に対して,回答文書検索モデルを構築する場合,基本的な手法として質問文書の類似度による手法が考えられる.しかし,cQAサイトで見られるような,質問ごとに存在する回答文書の多様性を的確に掴みながら,適切な内容の回答文書を提示することは困難であると考えられる.そこで本研究では,トピックモデルの代表的な手法であるLatent Dirichlet Allocation(LDA)を用いることで,従来手法では対応できなかった回答文書の多様性を考慮可能な回答文書検索モデルの構築手法を提案する.最後に,提案モデルの有効性を検証するため,実際にcQAサイトに投稿された質問・回答文書を用いた検証実験を行い,検索結果の性能を評価するとともに,得られた結果に基づいて考察を行う.
著者
金澤 真平 楊 添翔 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.47-64, 2021-06-15 (Released:2021-06-30)
参考文献数
12

中古ファッションアイテムの買取・出品・販売を行うECサイトではアイテムのブランドやカテゴリ,コンディションなど,商品情報が非常に多様であるため,出品価格の決定は重要かつ難しい課題の一つである.本研究の提案モデルでは,出品システムによって設定された出品価格を変更した場合の販売結果を観察するため,価格変更テストを設計する.一方,販売価格の予測精度を高めるため,アイテムの特徴と予測精度に関する情報をもとにアイテムのクラスタリングを行い,価格変更テストの結果データをモデルの検証データとして活用することで,高い精度で予測可能なアイテム群を発見する.そして,クラスタリングによって高い精度で予測可能であると特定されたアイテム群を提案モデルに適用可能なアイテム群と捉え,それらのアイテムに関して出品価格を変更した場合の販売価格を予測する.また,その予測結果に基づいてアイテムごとの出品価格と販売価格の関係性を捉え,適切な出品価格設定に関する分析を行う.
著者
大川 順也 雲居 玄道 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-54, 2020-06-15 (Released:2020-07-03)
参考文献数
27
被引用文献数
1

近年,多くの企業で,システムやサービスに関する問合せをオンラインで受け付けるシステム(質問応答システム(Question Answering (QA) systems))が導入されている.この質問応答システムにおいて,Webフォームやメールなどが取り入れられ,電子文書形式で問合せの送信が可能となっている.その際,送られてくる問合せ文書に対する回答文書は人手で作成されているのが現状である.そのため,過去の問合せ・回答履歴データを活用することで,回答文書作成作業の自動化ができると,企業内の業務効率化にとって有益であると考えられる.しかし,問合せ文書の内容は自動対応が可能な案件や,人手による個別対応が必要な案件など,多岐にわたっている.そのため,最初からすべての問合せ・回答文書を学習し,回答文書作成の自動化をすることは困難である.そこで本研究では,問合せ・回答文書の関係性を分析するモデルを構築する.最後に,本手法の有効性を示すために,某大手企業の質問応答システムに蓄積された問合せ・回答文書の実データに対して提案モデルを適用して検証を行う.
著者
楊 添翔 山下 遥 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.54-69, 2022-07-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
22

年間累積購買金額がある額を超えると顧客のステージが上位へ向上し,ポイントなどの特典を提供する会員ステージ制というマーケティング施策がある.この仕組みにより,企業側は,顧客の購買意欲を高めるだけでなく,その購買履歴データを得て優良顧客の特定などの分析に用いることが可能である.この仕組みのもと,会員ステージ間での購買特性の差異を明らかにすることは様々なメリットがある.一方,多様な嗜好を有した顧客が混在した対象データに対しては,クラスタリングモデルを構築することが顧客理解のために有用である.しかし,会員ステージ間で独立に顧客クラスタリングを適用した場合,得られたクラスタを会員ステージ間で紐付けて比較分析することができない.本研究では,会員ステージ間でクラスタ分布の差異が分析できるモデルとその学習アルゴリズムを提案する.
著者
坂元 哲平 小林 佑輔 中川 慶一郎 生田目 崇 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.346-356, 2021-01-15

近年,消費者の嗜好の多様化にともない,テレビ業界においても視聴者の嗜好に寄り添った魅力的な番組戦略や広告戦略を編成する必要性が増している.このような問題意識と,デジタル化によるデータの蓄積を背景にテレビ視聴データの分析事例が報告されている.一方で,従来研究では視聴履歴を用いて視聴者と番組の関係性を表現することを目的としたモデル化事例についての議論は盛んではない.そこで本研究では,両者の関係性をトピックモデルに基づくクラスタリングによってモデル化するデータ分析手法を提案する.一般に視聴者の嗜好は時間的に変化することが考えられるため,時系列を考慮したトレンドの分析を可能とするような分析法が必要である.ここで,ドラマ番組のように3カ月を1クールとして放送される番組がいっせいに変わるというテレビ特有の事象に対して,単純なクラスタリング法ではクラスタの継続性が保たれないという問題があるため,その問題に対応するトレンド分析法を提案する.さらに,得られた結果を用いた分析を直感的に行うために,サンキーダイアグラムを用いた可視化を施す.また,多様な視聴者の視聴傾向を1つのクラスタへ一意に所属させる場合と,複数クラスタへの所属を許容する場合の2つの分析法を提案し,比較を行う.最後に,提案分析法を実際のテレビ視聴データに適用し,提案法の有効性を示すとともに,結果の分析を行い視聴者のテレビ視聴行動を明らかにする.
著者
後藤 正幸 開沼 泰隆 俵 信彦
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会誌 (ISSN:03864812)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.152-158, 1995-06-15
被引用文献数
2

階層型ニューラルネットワークの学習法であるBP学習において, 学習速度とローカルミニマの問題がある.学習の高速化に関しては, 共役勾配法が提案されており, その高速性が明らかになっているが, 初期値依存性の問題も合わせ持つ.一方, 初期値依存性に対しては, 変傾法が提案されているが, 本質的に最急降下法であるため, 学習速度の面で改良の余地がある.そこで, 本研究では変傾法の更新を共役方向に実現する変傾共役勾配法を提案する.さらに, その挙動に癖が見られることを指摘し, この癖を利用して高速化を図った改良型変傾共役勾配法を提案し, 化学プロセスの制御問題に適用してその有効性を示す.
著者
良川 太河 山極 綾子 楊 添翔 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第35回全国大会(2021)
巻号頁・発行日
pp.3G1GS2g05, 2021 (Released:2021-06-14)

機械学習分野においてラベル分類の代表的な手法の一つである決定木は解釈性が高い識別器である.しかし過学習を起こしやすく,十分なデータ数がない場合予測精度が悪化する恐れがある.一方,アンサンブル識別器は過学習を防ぎ高い予測精度を示すが,複数の決定木を合成しているため解釈性が失われてしまう.そのため,アンサンブル識別器に近い予測性能を持つ単一の決定木を学習できれば,予測性能と解釈性を備えた有益なモデルとなる. そこで,学習データの生成により予測精度が高い単一の決定木を学習する手法が研究されている.その代表的な手法にBorn Again Treesがある.しかし,データ生成の際に膨大な計算量が必要となる上に,対象データの分布から外れたデータも多数生成してしまうため,学習した決定木が複雑になり解釈性が低下する恐れがある. そこで本研究では,生成モデルであるAutoencoderとオーバーサンプリング手法であるSMOTEを用いて対象データの分布に従うデータを少ない計算量で生成し,高い予測精度を持つシンプルな決定木の学習方法を提案する.最後に実データを用いた評価実験を行い,提案手法の有効性を示す.
著者
大川 順也 雲居 玄道 後藤 正幸
出版者
一般社団法人 経営情報学会
雑誌
経営情報学会誌 (ISSN:09187324)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.39-54, 2020

<p>近年,多くの企業で,システムやサービスに関する問合せをオンラインで受け付けるシステム(質問応答システム(Question Answering (QA) systems))が導入されている.この質問応答システムにおいて,Webフォームやメールなどが取り入れられ,電子文書形式で問合せの送信が可能となっている.その際,送られてくる問合せ文書に対する回答文書は人手で作成されているのが現状である.そのため,過去の問合せ・回答履歴データを活用することで,回答文書作成作業の自動化ができると,企業内の業務効率化にとって有益であると考えられる.しかし,問合せ文書の内容は自動対応が可能な案件や,人手による個別対応が必要な案件など,多岐にわたっている.そのため,最初からすべての問合せ・回答文書を学習し,回答文書作成の自動化をすることは困難である.そこで本研究では,問合せ・回答文書の関係性を分析するモデルを構築する.最後に,本手法の有効性を示すために,某大手企業の質問応答システムに蓄積された問合せ・回答文書の実データに対して提案モデルを適用して検証を行う.</p>
著者
劉 佩潔 山下 遥 岩永 二郎 樽石 将人 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.211-226, 2018-01-15

近年,インターネット上でユーザの提供したレストラン情報を掲載するグルメサービスが広く利用されるようになった.本論文で対象とするグルメサービスRettyでは,ユーザはレストラン検索に加えて,レストランに対するおすすめ度や推薦記事の投稿,他ユーザが投稿した推薦記事に対するリアクション(ex.,「いいね」)等をすることができる.このリアクションの数はサービス全体の活性度を表す指標として位置づけられ,サービス運営会社とユーザの双方にとって,リアクション数の増加が望まれる.そのため,ユーザの投稿やリアクションといった履歴情報を活用し,リアクション数の増加に結び付けられる施策を明らかにするための分析モデルは意義がある.一方で,これらのユーザの投稿やリアクションは,個々のユーザの判断に行われ,多様な個人的嗜好を反映したものとなっている.これらのユーザの嗜好は多様であり,全ユーザに対して単一的な統計的法則があるとは考えられないため,その異質性を表現した統計モデルを導入する必要がある.そこで本研究では,ユーザがレストランに対して情報を掲載する行動,ならびにその他のユーザがその情報にリアクションする行動を,潜在クラスモデルによって表現する.具体的には,ユーザがレストランに対しておすすめ度を含む推薦記事を投稿する事象を「投稿するユーザ」,「レストラン」,「おすすめ度」の3つの共起ととらえ,「発信ユーザのおすすめ度傾向モデル」を提案する.さらに,記事を閲覧しているユーザが投稿にリアクションする事象を「閲覧しているユーザ」と「レストラン」,「記事を投稿したユーザ」の共起と考え,これらの事象に対して「受信ユーザのリアクション傾向モデル」を提案する.これらの評価傾向モデルとリアクション傾向モデルの両者を統合的に分析することで,リアクション数を増加させるための施策を検討する方法を示す.In recent years, social gourmet services that post restaurant information provided by users on the Internet have been widely used. On a social gourmet service, users can make a restaurant search, recommendations to restaurants, reactions (ex., "like") to the recommended articles posted by other users, and the like. The number of reactions is positioned as an indicator of the activity level of the service site, and an increase in the number of reactions is desired for both a service operating company and users. It is, therefore, meaningful to provide analytical models to exploit historical information such as posts and reactions by users and to clarify measures linked to an increase in the number of reactions. In this research, we propose the two statistical models of behaviors that users post information to restaurants and that other users react to that information introduced by latent class models. By analyzing both of the evaluation tendency model and the reaction tendency model in an integrated manner, we show a method of examining measures to increase the number of reactions.
著者
森 雅俊 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.26-35, 2003-04-15 (Released:2017-11-01)
参考文献数
15
被引用文献数
2

本論文は, 新製品を市場に投入する切り替えに関して価格と投入タイミングを戦略的に決定することに焦点を当てている.すべての製品には, 導入期, 成長期, 成熟期, 衰退期といった製品ライフサイクルがあるので, この中で現行製品から新製品への切替えがあり, 旧製品の生産中止と新製品の販売開始を最適に決定していく必要がある.この製品の切替えをスムーズに行なう為には, 新旧製品の価格に関する役割が大きい.我々は, この研究においてパーソナルコンピュータなどの比較的短期間の製品ライフサイクルを対象に利益の最大化を目指した最適な切替え問題に対しヒューリスティックな最適化モデルを開発した.