著者
保坂 大樹 河部 瞭太 山下 遥 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.8, pp.1390-1402, 2019-08-15

近年,消費者のWebサイト閲覧行動は重要なマーケティング分析の対象となっている.サイトの閲覧行動を分析することで,サイト間の関係性やユーザの嗜好を把握し,Web広告の掲載やメールの配信などのマーケティング施策の最適化や効率化が可能となるためである.しかし,蓄積されたWeb閲覧履歴データ中のサイトやユーザの関係性は複雑であり,サイト単位やユーザ単位の分析が困難となる場合が多い.したがって,そのような状況においても適用可能,かつ有効な分析手法が望まれている.本研究では,単語の意味分析において良い性能を示しているWord2vecとその拡張モデルに基づき,各サイトや各ユーザをそれぞれ意味空間上の多次元正規分布として表現するとともに,意味空間上のサイトやユーザの関係性に基づいて分析を行うための手法を提案する.学習された意味空間上の表現を用いた分析により,単純な閲覧,被閲覧の関係ではなく,閲覧行動の背後に存在するサイトやユーザの潜在的な特性や関係性を把握することが可能となる.また,提案手法では,サイトやユーザが持つ性質の広がりが多次元正規分布の分散行列として学習される.最後に,提案手法の有効性を検証するために,実際の閲覧履歴データ分析に適用し,得られる結果に関する考察を与える.さらに,分散行列をサイトの閲覧者の多様性,またはユーザの嗜好の多様性として解釈し,より詳細な分析が行えることを示す.
著者
楊 添翔 山下 遥 後藤 正幸
出版者
公益社団法人 日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.73, no.2, pp.54-69, 2022-07-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
22

年間累積購買金額がある額を超えると顧客のステージが上位へ向上し,ポイントなどの特典を提供する会員ステージ制というマーケティング施策がある.この仕組みにより,企業側は,顧客の購買意欲を高めるだけでなく,その購買履歴データを得て優良顧客の特定などの分析に用いることが可能である.この仕組みのもと,会員ステージ間での購買特性の差異を明らかにすることは様々なメリットがある.一方,多様な嗜好を有した顧客が混在した対象データに対しては,クラスタリングモデルを構築することが顧客理解のために有用である.しかし,会員ステージ間で独立に顧客クラスタリングを適用した場合,得られたクラスタを会員ステージ間で紐付けて比較分析することができない.本研究では,会員ステージ間でクラスタ分布の差異が分析できるモデルとその学習アルゴリズムを提案する.
著者
劉 佩潔 山下 遥 岩永 二郎 樽石 将人 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.211-226, 2018-01-15

近年,インターネット上でユーザの提供したレストラン情報を掲載するグルメサービスが広く利用されるようになった.本論文で対象とするグルメサービスRettyでは,ユーザはレストラン検索に加えて,レストランに対するおすすめ度や推薦記事の投稿,他ユーザが投稿した推薦記事に対するリアクション(ex.,「いいね」)等をすることができる.このリアクションの数はサービス全体の活性度を表す指標として位置づけられ,サービス運営会社とユーザの双方にとって,リアクション数の増加が望まれる.そのため,ユーザの投稿やリアクションといった履歴情報を活用し,リアクション数の増加に結び付けられる施策を明らかにするための分析モデルは意義がある.一方で,これらのユーザの投稿やリアクションは,個々のユーザの判断に行われ,多様な個人的嗜好を反映したものとなっている.これらのユーザの嗜好は多様であり,全ユーザに対して単一的な統計的法則があるとは考えられないため,その異質性を表現した統計モデルを導入する必要がある.そこで本研究では,ユーザがレストランに対して情報を掲載する行動,ならびにその他のユーザがその情報にリアクションする行動を,潜在クラスモデルによって表現する.具体的には,ユーザがレストランに対しておすすめ度を含む推薦記事を投稿する事象を「投稿するユーザ」,「レストラン」,「おすすめ度」の3つの共起ととらえ,「発信ユーザのおすすめ度傾向モデル」を提案する.さらに,記事を閲覧しているユーザが投稿にリアクションする事象を「閲覧しているユーザ」と「レストラン」,「記事を投稿したユーザ」の共起と考え,これらの事象に対して「受信ユーザのリアクション傾向モデル」を提案する.これらの評価傾向モデルとリアクション傾向モデルの両者を統合的に分析することで,リアクション数を増加させるための施策を検討する方法を示す.In recent years, social gourmet services that post restaurant information provided by users on the Internet have been widely used. On a social gourmet service, users can make a restaurant search, recommendations to restaurants, reactions (ex., "like") to the recommended articles posted by other users, and the like. The number of reactions is positioned as an indicator of the activity level of the service site, and an increase in the number of reactions is desired for both a service operating company and users. It is, therefore, meaningful to provide analytical models to exploit historical information such as posts and reactions by users and to clarify measures linked to an increase in the number of reactions. In this research, we propose the two statistical models of behaviors that users post information to restaurants and that other users react to that information introduced by latent class models. By analyzing both of the evaluation tendency model and the reaction tendency model in an integrated manner, we show a method of examining measures to increase the number of reactions.
著者
永森 誠矢 山下 遥 荻原 大陸 後藤 正幸
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.1273-1285, 2018-04-15

近年,企業は就職ポータルサイトを用いて学生に採用情報を提供している.その際,就職ポータルサイトを活用しようとする企業は採用活動の被エントリ数への影響とその予測値に関心がある.そこで本研究では,就職ポータルサイトに蓄積されている履歴データを活用し,新規企業が獲得できる被エントリ数の予測と被エントリ数の影響要因分析のためのモデルを構築する方法について検討する.具体的には,精度の高い予測とともに,影響要因の効果を分析可能とするモデルとして,各企業が持つ潜在的要因を考慮した混合回帰モデルを提案する.提案したモデルを就職ポータルサイト上の実データに適用し,企業の採用活動と学生の被エントリ数の関係性を解析し,その有効性を示す.