著者
劉 麗鳳
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.102, pp.155-174, 2018-05-31 (Released:2020-03-13)
参考文献数
25

本稿の目的は,中国の都市部と農村部の中学校における「できない生徒」に対して,教師がどのように処遇しているのかを考察することである。用いたデータは,都市部と農村部の中学校での参与観察とインタビューである。中国では農村部の中学生の退学率が高く,先行研究から家庭の貧困と親の勉学への無理解,学校の物理的な条件が指摘されているが,教師文化や指導文化など学校内部のミクロレベルでの教師 - 生徒間の相互作用が中学生の退学行動に及ぼす影響の考察も重要である。 本論では,以下の点を明らかにしている。都市部の中学校の教師は,他の生徒の学習の妨げにならないよう「できない生徒」に対して「ソフトな隔離」をしつつ,教室内の役割を与えることで生徒集団の一員として包摂していた。一方,農村部の中学校の教師は「できない生徒」を教室や授業からあからさまに排除し,彼らに教室外の役割を与えると同時に,彼らを監視役に利用して校内の秩序づけを行っていた。中国における「学業成績重視」の価値観のもとで教師の処遇に違いが生じる背景には,教師が用いるストラテジーに違いがあり,前者は生徒の学習意欲の喚起を重視するペダゴジカル・ストラテジーが用いられていたのに対して,後者は「できない生徒」を教室や学校から排除することで自らの評価を高めようとする教師のサバイバル・ストラテジーが用いられていた。