著者
加納 寛起 山根 岳志 吉田 正道 柴柳 敏哉
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.27-34, 2022-03-20 (Released:2022-03-20)
参考文献数
15

2種の輸送物性,拡散係数およびSoret係数が未知である水溶液に対して,レーザホログラフィ実時間干渉法を適用し,それぞれを同一の光学系上で計測するシステムを提案する.まず,本計測法の妥当性と信頼性を検討した.拡散係数はNaCl水溶液,KCl水溶液を対象に,拡散方程式の厳密解が正規分布にしたがうことから干渉縞群厚さの時間変化を利用して算出し,文献値と良好に一致した.Soret係数はNaCl水溶液を対象に,ある時刻の干渉縞位置,熱拡散項を含んだ拡散方程式の厳密解,上記で求めた拡散係数から算出し,既往研究の計測値と良好に一致した.妥当性確認後,文献値に乏しいNa2CO3水溶液10 wt%においても両者の計測を行った.また,本計測に対する誤差要因を明らかにし,拡散係数およびSoret係数の不確かさ幅を推定した.本法は等屈折率線と一致する干渉縞の解析に溶液の屈折率と温度・濃度の関係を利用することで,既存手法に比べて拡散係数およびSoret係数算出の単純化が図られた.