著者
柴 隆大 佐々木 孝 牧野 育代 川上 幸治 加藤 幾雄 内田 和美 小林 稔秀 金子 公幸
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会 第39回日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.P-60, 2012 (Released:2012-11-24)

【目的】p-クレゾールはチロシンが腸内細菌によって代謝されることで生成する腸内腐敗産物の一種であり、免疫毒性を有することが示唆されている。本発表では、腸管で産生されるp-クレゾールが細胞性免疫応答に及ぼす影響に着目して検討した結果を報告する。【方法】BALB/cマウスの食餌中にチロシンを負荷することで、血中のp-クレゾール濃度が高値となるp-クレゾール高産生モデルを構築した。このモデルにアレルギー性接触性皮膚炎を誘導することで、細胞性免疫応答に対するp-クレゾールの影響を評価した。さらに、ex vivoおよびin vitroにおいて、マウス脾臓細胞のサイトカイン産生に対するp-クレゾールの影響を評価した。【結果】p-クレゾール高産生モデルマウスでは、接触性皮膚炎反応が有意に低下した。この接触性皮膚炎反応は血中p-クレゾール濃度との間に負の相関が認められた。Ex vivoでは、菌体刺激に対する脾臓細胞のIL-12産生能と、血中p-クレゾール濃度との間に負の相関が認められた。また、in vitroでは、p-クレゾールは菌体刺激により産生されるIL-12とIFN-γを抑制した。さらに、p-クレゾールは抗CD3抗体刺激によるIFN-γの産生を抑制し、IL-4の産生を促進した。【考察】経口摂取したチロシンによって腸内で産生されるp-クレゾールは、細胞性免疫応答を抑制した。また、p-クレゾールは細胞性免疫に対して促進的な作用をもつIL-12とIFN-γの産生を抑制し、抑制的な作用をもつIL-4の産生を促進した。これらの結果から、p-クレゾールはサイトカイン産生を変化させることで、細胞性免疫応答に対して抑制的に作用することが示唆された。
著者
浅川 直之 大塚 純 角 将一 水谷 立美 吉澤 和彦 古田 富雄 松本 常男 栗田 晃伸 鈴木 勝也 鈴木 倫 小林 稔秀 金子 公幸 船橋 英行 兼田 憲昌 加藤 幾雄 内田 和美
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第37回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.260, 2010 (Released:2010-08-18)

【目的】ペントバルビタール(PB)ナトリウム製剤は実験動物の全身麻酔薬として広く使用されている。我々はヒト・動物用医薬品であ るネンブタール注射液(NT)を繁用していたが,近年,販売中止となったことから,動物用医薬品であるソムノペンチル(SP)を使用す ることとした。しかし,NTとSPでは成分含量や添加物が異なること,これまでNTを用いたマウスの麻酔において,成書で謳われて いる至適投与用量(saline希釈,50 mg/kg,腹腔内投与)を投与しても十分な麻酔効果が得られない個体が出現することから,SPの使 用に先立ち,マウスにおけるSPの最適な麻酔法を確立するため,まず麻酔用量の検討を行った。さらに,マウスでは製剤を希釈して 投与する必要があることから,希釈溶媒をsalineからNTおよびSPの添加物であるEtOH(10%)に変更して比較検討を行った。また, 上記検討において得られた最適な麻酔用量を用いて,希釈溶媒による麻酔効果の差を体内動態の面から解析した。 【方法】10%EtOHまたはsalineで希釈した各用量(50.5,64.8および84.3 mg/kg)のSPを8週齢のCrlj:CD1(ICR)マウスに腹腔内投与 し,麻酔深度の判定基準に従って麻酔効果を比較した。また,最適な麻酔用量(salineまたは10%EtOH希釈)での血漿中および脳中PB 濃度をHPLCを用いて測定し,薬物動態学的解析を行った。 【結果および考察】10%EtOHで希釈したSP 64.8 mg/kgを腹腔内投与する麻酔条件がその効果の確実性,持続性の面から最適であっ た。また,64.8 mg/kgでは,脳のT1/2(消失半減期),AUC(濃度-時間曲線下面積)およびMRT(平均滞留時間)はsaline希釈と比べて 10%EtOH希釈で高値傾向を示したが,血漿中濃度推移は顕著な差が認められなかった。このことから,マウスでのSP投与では,希 釈溶媒がPBの脳移行性に影響を与え,10%EtOHはsalineよりもSPの麻酔効果を増強させることが明らかとなった。