著者
乾 敦行 工藤 晋太郎 原 耕司 水野 謙 加藤 紀夫 上田 和紀
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1_124-1_150, 2008 (Released:2008-02-29)

LMNtalは階層グラフ書換えに基づく単純な言語モデルであり,接続構造の表現に論理変数を,階層構造の表現に膜を用いることを特徴としている.LMNtalは,多重集合や並行処理やモビリティなどの概念を持つさまざまな計算モデルの統合を目指すと同時に,階層グラフ書換えに基づく実用的なプログラミング言語を提供してその有用性を示すことを重要な目標としている.本論文の目的は,プログラミング言語としてのLMNtalの諸機能を紹介し,その記述力を多くの例題を用いて示すことである.我々は,算術,ルール適用制御,モジュール,他言語インタフェースなどの重要機能を階層グラフ書換えモデルの中に組み込む方法を設計し実装した.記述力の検証のためにλ計算,π計算,ambient計算,CHRなどの代表的な関連計算モデルのエンコーディングを行い,それらを実際に処理系上で動作させることに成功した.
著者
加藤 紀夫 上田 和紀
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌プログラミング(PRO) (ISSN:18827802)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.155-155, 2005-01-15

階層的グラフ構造の書換えに基づく並行言語において,プロセスが形作る構造に関する静的な性質を表現し,解析する新しい枠組みを提案する.本発表では,階層グラフ書換え言語としてLMNtal を例に取り,この言語に型体系を導入する具体的な方法を示す.LMNtal はグラフのノードとしてアトムを持ち,アトム間を結ぶ1 対1 のリンクを持つ.さらにアトムは膜と呼ばれる構文で階層化され,各膜がその膜内に対して局所的に適用される書換えルールを持つ.グラフ書き換え言語をプログラミング言語として見たときには,プログラムの書き方や処理系の最適化に関する指針に関する研究が求められる.しかし,従来の並行グラフ書換え言語は,LMNtal と違って一般のグラフ書き換えを実用に供するプログラミング言語にするというアプローチの研究が不足しているため,一般のプログラムに対して上述の指針を与えるために役に立つ解析技術はあまり存在しない.本発表で提案する型体系は,はじめにアトムをアクティブなものと,非アクティブなものに分類し,アクティブアトムにつながる可能性のあるプロセスやデータを解析することに基づいた強い型をプログラムに導入する.この型体系は,並行論理型言語のうえでの強モード体系をLMNtal に応用したものであるが,膜に関する性質を扱う点で新しい.本発表では,型体系の型安全性を証明する.We propose a new framework for formalizing and analyzing static properties on the shapes of processes in concurrent languages based on hierarchical graph rewriting. We take LMNtal as an example language and show a concrete method to introduce a type system to this language. LMNtal has atoms as graph nodes and one-to-one links that connect together atoms. Moreover, atoms are hierarchized with membranes and each membrane has rewriting rules local to itself. Viewed as programming languages, graph rewriting languages ask for research on how to write programs and how to optimize the runtime system. However, since the graph rewriting languages so far have lacked in research towards making themselves practical programming languages, few analysis techniques exist that can be used for solving the above issues. Our type system firstly classifies atoms into active ones and passive ones, and then introduces to the program strong types based on which processes as well as data can be connected to active atoms. The type system has been obtained by applying the strong mode system of concurrent logic languages to LMNtal, but is new in that it can deal with properties on membranes. The proof of the type safety will be shown.
著者
上田 和紀 加藤 紀夫
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.126-142, 2004-03-25 (Released:2010-01-04)

階層的グラフの書換えを基本原理とするプログラミング言語モデルLMNtalについて,設計の背景および関連研究を交えながら解説する.LMNtal(elementalと発音)は,並行計算や多重集合書換えをはじめとするさまざまな計算に関する概念の統合を目指して設計した言語モデルであり,(1)計算モデルとして簡明であることと,(2)多様なプラットフォームで利用可能な実用プログラミング言語のベースとなること,の両立を目指している.処理系も稼働を始めている.本解説ではなるべく多くのプログラム例を交えながら,LMNtalの言語機能について解説するとともに,他の言語や計算モデルに見られる言語機能との関連付けを行なう.関連計算モデルに言及する部分は,並行計算および論理プログラミングに関する初歩的な知識があるとよりよく理解できるあろう.しかし,LMNtal自体の言語機能やプログラム例は予備知識なしで十分理解できるように解説したい.
著者
岡本 龍史 戸田 絵梨香 加藤 紀夫
出版者
一般社団法人 植物化学調節学会
雑誌
植物の生長調節 (ISSN:13465406)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.52-56, 2020 (Released:2021-07-01)
参考文献数
29

Technology involving the targeted mutagenesis of plants using programmable nucleases has been developing rapidly and has enormous potential in next-generation plant breeding. Its application has been hindered in many cases, however, due to technical hurdles, such as the low delivery rate of macromolecules into plant cells or tissues and difficulties in plant transformation and regeneration. Here, we report a genome-editing system via PEG-Ca2+-mediated transfection of rice zygotes, produced by in vitro fertilization of isolated rice gametes. Cas9-gRNA ribonucleoprotein complexes(RNPs), were transfected into zygotes, resulting in the regeneration of plants with a high frequency of targeted mutations, in the range of 14-64%. This novel and efficient plant genome-editing system has enormous potential for the improvement of rice, as well as other important crop species.
著者
村山 敬 工藤 晋太郎 櫻井 健 水野 謙 加藤 紀夫 上田 和紀
出版者
日本ソフトウェア科学会
雑誌
コンピュータ ソフトウェア (ISSN:02896540)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.2_47-2_77, 2008 (Released:2008-06-30)

LMNtalは階層グラフ書換えに基づく言語モデルであり,リンク構造による接続構造と膜による階層構造の表現・操作機能によって,動的データ構造や多重集合書換えを扱うプログラムを簡潔に記述することができる.LMNtalは書換え規則の適用を単位とする細粒度の並行性をもっており,正しく効率的な実装方式は自明でない.そこで言語処理系をJavaを用いて開発し,効率をできるだけ犠牲にせずに正しく動作する実装方式を確立した.処理系は中間命令列へのコンパイラ,その解釈実行系及びJavaソースへのトランスレータからなり,他言語インタフェースをはじめとするさまざまな有用な機能を備えている.複数の膜を貫くリンク構造を正しくつなぎかえるための処理や,複数の膜にある書換え規則を正しく非同期実行させるための工夫も行っている.本論文では,処理系開発において主要な技術的課題となった階層グラフ構造の保持方法,中間命令体系,安全な非同期実行方式等を中心として,公開中のLMNtal処理系の設計と実装について論じる.