著者
鈴木 聡 竹石 恭知 佐々木 敏樹 加藤 重彦 北原 辰郎 小山 容 新関 武史 久保田 功 相良 三奈
出版者
Japan Heart Foundation
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.365-372, 2008

背景:Pentraxin 3(PTX3)は新しい炎症マーカーであり,血管内皮細胞や血管平滑筋,マクロファージなどから産生される. 心不全患者においては全身の炎症反応が亢進しており炎症マーカーやサイトカインの血中濃度が上昇している.本研究の目的は心不全患者における血漿中のPTX3濃度の臨床的,意義を調べることである.<br>方法:血漿中PTX3濃度を心不全患者134名および正常対照者25名で測定した.心臓死または心不全増悪による再入院をエンドポイントとして追跡調査を行った(中央値546日).<br>結果:血漿中PTX3濃度は正常対照者に比べて心不全患者において有意に上昇していた(P<0.0001).正常対照者の平均値+2標準偏差から正常上限値を決定した(4.4ng/mL)ところ,PTX3異常高値の患者数はNYHAクラスが上がるごとに増加していった(P<0.0001).追跡期間中合計42人の患者において心イベントが発生したが,心イベント発生率はPTX3正常群に比べて異常高値群において有意に高かった(p=0.0003).単変量Cox比例ハザード解析では,変数データの中で左室拡張末期径,左室収縮率,血漿PTX3濃度,BNP,クレアチニン,尿酸が心血管イベントの有意な予測因子であった.これらの項目すべてに対し多変量解析を行ったところ,PTX3のみが心イベント発生の独立した予測因子であった(ハザード比1.29,95%信頼区間1.07-1.58,P=0.0074).さらに,心不全患者をPTX3濃度で4群に分けて解析を行ったところ,PTX3濃度が最も高い第4群において,心血管イベント発生の危険率が第1群の6.58倍高値であった.<br>結語: 血漿PTX3濃度は心不全患者において重要な予後予測因子となり得ることが示唆された.
著者
石野 光則 竹村 昭宣 加藤 重彦 安日 智 北原 辰郎 新関 武史 山内 聡 池野 栄一郎 久保田 功
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.46, no.12, pp.1601-1606, 2014 (Released:2015-12-15)
参考文献数
7

症例は44歳女性. 2013年7月下旬より感冒症状あり近医にて処方を受けたが, その後に労作時の呼吸苦と動悸症状が出現し当院を受診した. 心電図で頻脈性心房細動とST上昇を認め, 心エコー図で全周性の壁肥厚と心嚢液の貯留を認めた. 採血では甲状腺機能亢進症が認められ, 急性心筋心膜炎にバセドウ病を背景とした頻脈性心房細動が合併した心不全と判断し治療を開始した. 経過中に好酸球の上昇を認め, 薬剤性を疑い薬剤を中止したが, 1週間後に呼吸苦が増悪した. 好酸球増多症と心エコー図で心肥大と心嚢液貯留の改善を認めなかったため心筋生検を施行した. 病理像では好酸球の浸潤を認め好酸球性心筋炎と診断し, ステロイド投与を開始したところ心不全症状は速やかに改善し, 胸部単純X線写真・心エコー図・採血でも改善を得られた. 薬剤による反応が原因と考えられた急性好酸球性心筋炎に対して, 心不全治療に抵抗を示したが, ステロイド療法により著明な改善を得られた症例を経験したので報告する.