著者
加藤肇彦 高野 忠 上杉 邦憲 周東晃四郎 山田 隆弘 金川 信康 井原 廣一 田中 俊之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.9, pp.1936-1948, 1994-09-15
参考文献数
23
被引用文献数
2

衛星搭載用高信頼コンピュータ開発と、その運用による実証について報告する。高い信頼性が要求される衛星搭載用コンピュータの構成要素として、高価で低集積度の宇宙用半導体に比較した地上用半導体の利点に着目し、その短所を補強しながら、高信頼の衛星搭載用コンピュータを構成する方法を検討した。宇宙線の入射による劣化と誤動作に加え、衝撃、振動、温度環境、重量・寸法・消費電カの制限は、いずれもソフトウェアとシステム構成への厳しい要求条件となる。そしてこれらのすぺてを満足するアプローチとして、フォールトトレランス方式を採用した。フォールトトレランス方式を空間ダイバーシティと時間ダイバーシティに大別し、空間ダイバーシティを部品内レベル、部品間レベル、システムレベルで実現した。特にシステムレベルでは処理ユニットを多重化し、緩い同期による出カの多数決をはかった。空間ダイバーシティに宿命的に付随するシングルポイント故障を回避するために、時間ダイバーシティ、具体的には出力フィードバックを採用し、空間・時間ダイバーシティを含めた診断アルゴリズムを創出した、さらに、各状況における最も正しい出力の選択のために、ステップワイズ・ネゴシエーティング・ボーティングの診断法を考案した。最後にこれらの各高信頼化技法を実機で実現し、軌道上で運用してその正当性を実証した、今後は実績をもとにさらなる拡張発展をはかる。