著者
加隈 哲也
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.104, no.4, pp.730-734, 2015-04-10 (Released:2016-04-10)
参考文献数
9

一般的に,肥満者には運動習慣がないといわれている.それ以前に,肥満者は2時間長く座っているという.肥満症治療として運動療法が重要であることは間違いないが,その継続的な遂行は必ずしも容易ではない.健康増進を目的とした身体活動量の増加には,朝日を浴びながらのゆったりとした散歩を心がけてみたい.運動療法という言葉にとらわれずに,明日からでも可能なことから始めることが重要である.
著者
吉松 博信 加隈 哲也 正木 孝幸
出版者
大分大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

ストレスと肥満症における脳内神経ヒスタミン機能を明らかにするために、平成22年度は以下のような研究成果をあげた。1)痛覚ストレスおよび情動ストレスは負荷後24時間の1日摂食量を有意に減少させた。2)4時間拘束ストレスは負荷後24時間の1日摂食量を減少させた。3)飢餓ストレスとしての72時間の絶食負荷後、再摂食時の摂食量はストレス負荷前の摂食量と比べ有意に減少した。4)インスリン誘発性低血糖はインスリン投与後2時間の摂食量を有意に増加させた。5)寒冷ストレスは食行動に影響しなかった。6)tail pinchによるストレス負荷は食行動を誘発した。以上の実験結果から各種ストレスは主に摂食行動を抑制する方向で作用するが、寒冷ストレスは効果がなく、tail pinchは食行動促進性に作用するなど、ストレスの種類にともない反応が異なることが確認された。現在これらのストレスの慢性負荷による影響を検討している。また3),4)より飢餓ストレスの効果は低血糖などのエネルギー欠乏が直接原因ではなく、エネルギー欠乏によって生じる神経ヒスタミンの増加など、他の要因の関与があることが示唆された。そこで、ストレスと神経ヒスタミンに関して以下のことを明らかにした。7)拘束ストレスによる食行動抑制反応はヒスタミンH1受容体欠損マウスでは有意に減弱した。8)拘束ストレスは視床下部において、ヒスタミン合成酵素であるhistidine decarboxylase (HDC)のタンパク量を有意に増加させた。9)拘束ストレスは視床下部の神経ヒスタミン代謝回転を有意に増加させた。10)寒冷ストレスは視床下部のHDCタンパク量を有意に増加させた。以上より、拘束ストレスによる摂食抑制作用は神経ヒスタミンを介していることが明らかになった。他のストレスによる神経ヒスタミンの動態変化を現在解析中である。