著者
松永 達雄 藤波 義明 務台 英樹 神谷 和作
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2005

近年、難聴をきたすミトコンドリア遺伝子変異が多数報告されているが、現在のところ日本人の難聴者において本遺伝子変異が全体としてどの程度関与するかは不明である。そこで本研究では、日本人の原因不明の非症候群性難聴者(先天性/小児の難聴者53人、後天性の難聴者76人)および健聴者144人のDNA検体を用いて、ミトコンドリアDNAの難聴遺伝子を解析した。多コピーのミトコンドリアDNAには、変異が生じた場合にミトコンドリア遺伝子が均一な状態であるhomoplasmyと異なった配列が混在するheteroplasmyの2種類の状態がある。まずhomoplasmy変異に関しての解析の結果、難聴遺伝子として報告されている5遺伝子において先天性/小児の難聴53人中のべ8人、後天性の難聴76人中のべ4人で国際的データベースに難聴遺伝子変異と報告されている変異が検出された。heteroplasmy変異に関しては、先天性/小児の難聴53人中のべ7人、後天性の難聴76人中のべ7人で変異が検出された。一方、健聴者においての検討では、難聴遺伝子の一つである12SrRNA遺伝子において144人中11人で難聴遺伝子変異と報告されている変異が検出され、これらは日本人において難聴の発症に環境因子が関与する可能性と難聴の発症に関与していない可能性が考えられた。それ以外の4遺伝子には健聴者では変異を認めなかった。これまでの結果から、日本人の難聴の原因に関与するミトコンドリアDNAの難聴遺伝子変異は、国際的データベースに報告されているものとは異なると考えられ、本研究で明らかになった日本人特異的なミトコンドリア遺伝子変異の特徴が、今後日本人の難聴の遺伝的原因の解明と診断に活用できると考えられる。
著者
松永 達雄 幸池 浩子 務台 英樹
出版者
独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

ミトコンドリアDNAのA1555G変異とA3243G変異およびGJB2遺伝子変異を除外した日本人の原因不明の両側性感音難聴患者(先天性難聴100家系および後天性難聴120家系)において、これまでに難聴遺伝子としての報告があるミトコンドリア遺伝子7種類(12SrRNA、tRNA Leu (UUR)、tRNA Ser (UCN)、tRNA Lys、tRNA His、tRNA Ser (AGY)、tRNA Glu)の変異をスクリーニングした。この結果、難聴者のみで同定される遺伝子変異が、12SrRNA遺伝子を含む2遺伝子に同定された。本研究成果は日本人難聴者の診断におけるミトコンドリア遺伝子変異解析の重要性を示すものである。