- 著者
-
藤波 芳
- 出版者
- 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター)
- 雑誌
- 若手研究(A)
- 巻号頁・発行日
- 2016-04-01
遺伝性網膜疾患は先進国において最も頻度の高い失明原因となっている。Stargardt病(STGD)、網膜色素変性症、黄斑ジストロフィ、錐体桿体ジストロフィをはじめ多くの疾患がABCA4異常に起因し、ABCA4関連網膜症の病態理解、治療導入が急務である。本研究の目的は、東京医療センター(NISO)、英国UCL、米国NIH、STGD国際共同プロジェクト(ProgSTAR)の連携の下、3大陸を跨いだ形でのABCA4関連網膜症国際コホート・共有データベースを作成する事である。さらに、変異構造解析を用いた遺伝子型・表現型関連解析、頻出変異の大陸間比較を行うことで、大陸・民族間の病態差異を理解した上での世界規模での治療導入の考案・個別化医療の実践を目指す。本研究は1)臨床診断・患者リクルート、2)遺伝子検索、3)国際データベース・コホート作成、4)変異インパクトスコア算出、5)遺伝子型・表現型関連解析、(6)コホート間変異頻度比較、(7)治療法考案、の七段階で遂行される。平成30年4月現在、NISOではABCA4関連網膜症155症例における臨床検査・診断、患者リクルートが終了し、現在までに20例について36のABCA4変異が同定されている。英国UCLからは190症例、米国NEI/NIH、ProgStar studiesからは193症例が登録され、計518例のABCA4関連網膜症がデータベースに登録された。現在までに同定された37の高頻度ミスセンス変異に対して、molecular modelingによるインパクトスコア算出が終了し、本スコアが遺伝子型・表現型相関解析に利用されている。公開データベースより得られた各民族正常者コホートにおけるABCA4変異頻度比較が可能となるインハウスデータブラウザの構築が完了しており、コホート・民族間変異頻度比較に活用されている。