著者
勝俣 隆
出版者
長崎大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

中世小説(お伽草子・室町物語)が、いかなる形で発生し、展開し、他のジャンルに影響を与えたかについて、伝本を調査し、諸本を校合し、考察を加えた。中でも、『七夕(天稚彦物語)』を中心に、他の作品についても検討を加えた。本研究の特色は、国の内外に所蔵される中世小説の伝本を実際に調査して、実証的に行う点にある。調査研究旅費で現地に赴き、閲覧し、直接撮影あるいは撮影を依頼し、挿絵や本文を入手することに努めた。日本では、仙台市立博物館・公文教育研究会・広島大学・慶應義塾大学・東京国立博物館・静嘉堂文庫・国立国会図書館・西尾市立図書館・海の見える杜美術館・小田原市立図書館・MOA美術館等、全国の博物館・図書館・美術館で中世小説を閲覧し、『七夕』の伝本について解題をつけて翻刻できた。海外では、台湾の国立台湾大学、アメリカのイリノイ州立大学、スウェーデンの東方博物館等の所蔵する中世小説を閲覧し、イタリアの国立中央図書館の所蔵する古典籍と併せて、調査報告書を上梓した。またコンピューターを購入し、デジタル撮影したものの画像処理を行った。名大でのシンポジウム「『十二類絵巻』とその周縁」ではパネラーとして、奈良絵本・絵巻国際会議広島大会では「お伽草子『七夕(天稚彦物語)』の諸問題」の題目で、それぞれ講演した。イタリアのローマでの第18回日本資料専門家欧州協会年次総会でも、「中世小説『七夕』の本文と挿絵について」という題目で、研究発表を行った。各講演・発表は、それぞれ論考として発表した。さらに中世小説と近縁の作品群の関係を論じた。