著者
坂梨 薫 勝川 由美 臼井 雅美 鍋田 美咲 大賀 明子 永井 祥子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.482-489, 2010-07

韓国の産後ケア施設の現状と課題を明らかにし,日本の新たなサポートシステムとしての産後ケア施設導入の可能性を考える目的で本研究を行った。梨花大学教授,韓国助産師会会長,ソウル助産師会会長のヒアリング,韓国の産褥ケア施設長および施設利用者へのインタビューから,1.産後ケア施設の業種としての位置づけが医療機関ではなく宿泊業に分類されている,2.産後ケア施設は医療機関ではないため,運営においては一般の人々や企業の参入を可能にしている,3.褥婦や新生児に異常が生じた場合,病院や診療所との連携システムが構築されていない,4.新生児を1ヵ所に収容した施設では,新生児に感染症が発症した場合,感染拡大の危険性が生じる,などが課題であることが明らかになった。しかし,利用者の支援内容に関する満足度は高かった。2008年開設された,わが国初の産後ケアセンターも宿泊業と産業分類されており,今後,わが国において産後ケア施設を導入し,拡充していくためには,産後ケア施設先進国である韓国での課題を自国の問題として検討していくことが必要となる。