著者
坂梨 薫 渡部 節子
出版者
長崎大学
雑誌
長崎大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:09160841)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.91-98, 1998
被引用文献数
4

実習指導のより効果的なあり方を検討する目的で,ECTB(Effective Clinical Teaching Behaviors)を用いて,看護婦の実習指導に対する自己評価の調査を実施した.今回は看護婦の経験年数による違いを中心に分析し,以下のことが明らかになった. 1)経験年数1~3年目の看護婦と4~5年目・6年目以上を比較すると,全項目の平均点で有意差がみられた.さらに,各項目の平均点をみると経験年数4~5年目では,43項目中30項目,6年目以上では43項目中38項目有意に低かった. 経験年数4~5年目の看護婦と6年目以上の間に有意差がみられたのは43項目中3項目であった.実習指導評価に関しては経験年数1~3年目と4年目以上の間に隔たりがみられた. 2)平均点の高かった項目は,経験年数に関係なく「良くやった時は誉め認めようとしていた」,「緊張している時にはリラックスさせるようにした」など学生との関係性や指導態度を示す内容であった. 経験年数別にみると,1~3年目の看護婦に学生との関係性や指導態度を示す内容が多く,4年目以上の看護婦では学生との関係性や指導態度のみではなく実践指導や指導方法に関する項目がみられた. 3)平均点の低かった項目は,経験年数に関係なく「実習グループの中で刺激しあって向上できるように援助していた」,「学生同士で意見交換ができるように働きかけていた」など,学生のグループダイナミクスを喚起し,意欲を向上させるような内容を示す項目と「看護者としての良いモデルになっていた」であった. 経験年数別にみると,1~3年目の看護婦は学生の意欲向上に関する項目が低い評価であり,4年目以上の看護婦は「看護婦間の指導方法は統一していた」という指導方法に関する項目が,6年目以上では看護実践に関する項目がみられた.Using ECTB (Effective Clinical Teaching Behaviors), a survey of nurses' self-assessments of their clinical teaching was carried out to consider how to make clinical teaching more effective. An analysis of differences according to their years of experience has shown the following results: 1)Comparing the nurses having 1 to 3 years experience with those having 4 to 5 years experience and having more than 6 years experience, a significant difference was found in the average score of all the items. Examining each average score of every item, the nurses having 4 to 5 years experience had significantly low average scores in 30 out of 43 items and those having more than 6 years experience had significantly low average scores in 38 out of 43 items. Significant differences were seen in 3 out of 43 items between the nurses with 4 to 5 years experience and those with more than 6 years experience. In almost all items of the self-assessments of their clinical teaching, there were wide differences between the nurses with 1 to 3 years experience and those with more than 4 yeare experience. 2)Regardless of their years of experience, the average scores were high in the items concerning the relationship to their students or their teaching attitude such as "tells students when she/he has done well", or "keeps self available when students are in stressful srtuations" Examining the average scores according to their years of experience, the nurses with 1to 3 years experience had the high average scores in many items concerning the relationship to their students or their teaching attitude. The high average scores of the nurses having more than 4 years experience were found in the items concerning not only the relationship to their students or their teaching attitude but also practical instruction and the teaching method. 3)Regardless of their years of experience, the low average scores were found in the items concerning stimulation to the group dynamics of students to raise students' motivation such as "Interacts well with students in a group situation", or "Permits freedom of discussion", and the item "is a good role model for students". Considering according to their years of experience, the nurses with 1 to 3 years experience had low opinions of themselves in the items concerning stimulation to students' motivations. The nurses with more than 4 years experience judged themselves low in the item concerning the teaching method, "is organized with clinical instruction". It was in the items concerning nursing practice that the nurses having more than 6 years experience had low opinions of themselves.
著者
齋藤 いずみ 遠藤 紀美恵 笹木 葉子 坂梨 薫 成田 伸 水流 聡子
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

目的:分娩時の看護人員配置の現状を把握し、根拠に基づく安全と質の保証された看護人員配置にするために、以下の4病院の分娩基礎データを収集した。地方の複数病院の分娩を集約化した公立病院の産科、専門特化した大規模産科病院2施設、混合科が進む産科の計4病院において、2003年1年間の全分娩事例約2500事例を調査した。文部科学省疫学研究の倫理指針に基づき実施した。方法:カルテ、分娩記録、助産録などからデータべースを作成し、月別・曜日別分娩数、曜日別入院数、曜日別異常分娩数、曜日別母体搬送数、曜日別緊急帝王切開数、曜日別児の体重別出生数、曜日別妊娠集数別出生数など、24時間分布としては分娩数、入院数、緊急帝王切開数、母体搬送数などを調査した。結果:月別分娩数は特に有意な差は見られなかった。曜日別分析:曜日別分娩数はハッピーマンデイ政策などにより、週の中盤に分娩が集中し、有意に人手の少ない週末は少なかった。妊娠週数の早い32週以前の分娩、出生体重1500g未満の異常分娩では、母体と児の安全のために週末に意思決定するためか金曜日に分娩が有意に高かった。特に母体搬送、緊急帝王切開では金曜日に高かった。曜日別時刻別分析では金曜日の午後から夕方までの時間帯に緊急帝王切開や分娩のリスクが高い分娩が多いことが明らかになった。24時間分布別分析:時刻別分析では、管理分娩の傾向が高い施設では日勤帯の分娩が多く、自然分娩が多く介入の少ない施設では24時間に分布していることが、統計的にも明らかになった。緊急帝王切開は人手のいない夜間帯にも少なくない現状である。考察及び課題科学的根拠に基づく分娩時の看護人員配置のデータとして非常に有益と思われる。また金曜日の午後から緊急性の高い児の出生や帝王切開が行われることは産科のみならず、NICUにも本情報を共有することが重要である。NICU の実態調査も必要性が高いと思われる。
著者
坂梨 薫 勝川 由美 臼井 雅美 鍋田 美咲 大賀 明子 永井 祥子
出版者
日本母性衛生学会
雑誌
母性衛生 (ISSN:03881512)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.482-489, 2010-07

韓国の産後ケア施設の現状と課題を明らかにし,日本の新たなサポートシステムとしての産後ケア施設導入の可能性を考える目的で本研究を行った。梨花大学教授,韓国助産師会会長,ソウル助産師会会長のヒアリング,韓国の産褥ケア施設長および施設利用者へのインタビューから,1.産後ケア施設の業種としての位置づけが医療機関ではなく宿泊業に分類されている,2.産後ケア施設は医療機関ではないため,運営においては一般の人々や企業の参入を可能にしている,3.褥婦や新生児に異常が生じた場合,病院や診療所との連携システムが構築されていない,4.新生児を1ヵ所に収容した施設では,新生児に感染症が発症した場合,感染拡大の危険性が生じる,などが課題であることが明らかになった。しかし,利用者の支援内容に関する満足度は高かった。2008年開設された,わが国初の産後ケアセンターも宿泊業と産業分類されており,今後,わが国において産後ケア施設を導入し,拡充していくためには,産後ケア施設先進国である韓国での課題を自国の問題として検討していくことが必要となる。