著者
挾間 章博 三宅 将生 小林 大輔 勝田 新一郎
出版者
福島県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

セシウムの臓器蓄積モデルとしてHeLa細胞を使用した。HeLa細胞に対してCsが増殖抑制効果を示すことを明らかにし、学術論文(FEBS Lett. 2017 Mar;591(5):718-727)として発表した。本研究で細胞内へのCsの流入が実際に起きていることが示され、Csにより解糖系酵素の発現抑制や機能抑制が起きている可能性が示された。HeLa細胞と他の細胞株のCs感受性の違いからCsの透過経路となる遺伝子を調べたところ、TRPC1、TRPM7がCsの透過経路と予想できた。
著者
勝田 新一郎
出版者
日本獣医循環器学会
雑誌
動物の循環器 (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.1-14, 2021 (Released:2021-09-18)
参考文献数
20
被引用文献数
1

血圧調節機構には短期調節機構と長期調節機構があり,前者は姿勢変換や運動,いきみ,精神的興奮などに伴う急な血圧変動を短時間に正常レベルに戻すための神経性調節機構である。後者は,分,時間,日,週,月さらに年単位に及ぶ調節機構で,腎臓から塩類と水の排泄による体液性調節が大きく関わっている。神経系やレニン–アンジオテンシン–アルドステロン系をはじめとする内分泌系は体液性調節を修飾している。Guytonらは摂取した塩類と水を腎臓がどのように排泄できるかを示すために,圧–利尿曲線の概念が構築された。腎臓の異常による圧–利尿曲線が高圧域へシフトした場合,または塩類と水を過剰摂取した場合はそれらを排泄するために高い圧が必要となり,血圧が上昇する。圧利尿が起きると血圧は元のレベルに戻る。近年では短期調節,長期調節ともに心臓血管中枢と呼ばれる延髄腹外側野(RVLM)やその周囲の領域を中心とした中枢神経系の関与が示されている。脳室周囲器官は血液–脳関門が比較的疎であり,その中の終板脈管器官で細胞外液Na+上昇が感知されると,それはRVLMにも伝えられ,交感神経活動が活性化されることが明らかにされている。また,脳内には末梢とは独立したレニン–アンジオテンシン系が存在し,脳内で産生されたアンジオテンシンIIはAT1受容体を介してNADPH oxidaseを活性化させ,活性酸素種(ROS)の産生を刺激する。これによってRVLMでの一酸化窒素(NO)の産生が低下し,RVLMに投射されるGABA作動性抑制性ニューロンの抑制効果は減弱されることが示されている。その結果,交感神経系は抑制されず活性化されることになる。今後,短期,長期血圧調節機構を問わず脈管系や腎臓などの末梢臓器や交感神経系,内分泌系のはたらきのみならず,それを制御する中枢神経機序を解明することが高血圧発症の解明や高血圧治療薬の開発に大きく貢献するものと思われる。