著者
小野田 恵介 土本 正治 勝間田 篤
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.9, pp.669-673, 2004-09-20
被引用文献数
1

神経サルコイドーシスにおいて水頭症を呈することは比較的稀である.水頭症を呈し,急激な増悪後,死亡に至った症例を経験し剖検を施行したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は18歳男性(ブラジル国籍), 2003年9月10日より頭痛があり,9月12日近医入院となった.9月16日軽度意識障害,両側外転神経麻痺も加わり当科紹介となった.来院時,髄膜刺激症状を認め,髄液検査を行ったが,初圧9cmH_2Oで,細胞数160/3(リンパ球優位),蛋白(750 mg/dl)は上昇しており,さらにanaiotensin converting enzyme(ACE)活性は2.6 1U/l と高度上昇していた.細菌培養は陰性で,結核菌群もDNA/PCRにて陰性であることが示された.CT,MRIでは水頭症を呈し,造影される肉芽腫性病変は認めなかったが,神経サルコイドーシスを強く疑った.入院後ステロイド投与を開始するも効果なく,けいれん,運動障害の出現,意識障害の進行を認めた.9月22日右脳室-腹腔シャント施行,脳室内髄液ACE活性は3.1 1U/lであった.重症肺炎の合併も認め,敗血症にて10月2日死亡された.同日剖検を施行した.頭蓋底髄膜に多発性のサルコイドーシス結節が確認された.原因不明の髄膜炎,水頭症を呈する例においては神経サルコイドーシスも鑑別診断に挙げるべきであり,また本例のように急速な増悪を呈する例があることを念頭に置く必要があると思われた.
著者
吉本 祐介 相原 寛 土本 正治 勝間田 篤
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.534-537, 2006-07-20
被引用文献数
1

稀ではあるものの,頸椎・頸髄疾患が片麻痺で発症することがある.今回われわれは,片麻痺にて発症した後縦靭帯骨化症および頸髄硬膜外血腫の2例を経験した.いずれの症例も,頸髄が片側優位に圧排されたため片麻痺をきたしたものと思われた.片麻痺をきたす疾患の鑑別診断として,頸椎レベルの病変も念頭に診療に当たるべきであり,頸部痛がある場合や外傷例,頭部MRlによっても片麻痺の責任病巣が明らかでない場合には,迅速に頸椎レベルまで検索範囲を広げて精査する必要がある.