著者
金澤 淑子 川名 麻依子 勝間田 麻衣
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会学術総会抄録集 (ISSN:18801749)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.297, 2008

手術を受けた婦人科悪性疾患患者の受診に対する抵抗感に関する意識調査<BR>金澤淑子1)川名麻依子1)勝間田麻衣1)<BR>1)神奈川県厚生連伊勢原協同病院<BR>〈緒言〉婦人科には、内診という特有の診察法があり、診察対象が生殖器であることから、患者は強い羞恥心を抱く。苦痛を伴う検査、処置が行われる場合もあり、不安、恐怖心がある。さらに、プライバシーの問題もあり、他科受診に比べ受診への抵抗感が強いと考えられる。私たち病棟看護師が手術を通して患者と関わる中、悪性疾患で手術を受けた患者から術後、「婦人科にかかるのはやはり躊躇した。でも、もう少し早く受診していればこういう結果にならなかったのかもしれないと今は思うようになった。」などの声が何度も聞かれた。そこで、婦人科受診への抵抗感に関する要因を明らかにし、その抵抗感がどのような影響を及ぼすのかを分析することを目的とし調査を実施した。その結果より、今後の看護援助のあり方に示唆を得たので報告する。<BR>〈方法〉2003年1月から2007年6月に当院において婦人科悪性疾患(子宮頸がん、子宮体がん、上皮内がん、卵巣がん)で手術を受けた患者135名を対象に郵送法による質問紙調査を実施した。(調査期間)2007年7月12日~8月10日(調査内容)1)対象の背景・年齢、婚姻、出産、手術後の化学療法、現在の体調 2)症状出現から受診までの期間 3)婦人科受診に対する抵抗感 4)抵抗感に関連した要因「男性医師による診察」「内診」「プライバシー」「検査や処置の内容」「検査や診察に伴う痛み」「施設や設備」の6項目を多肢選択法とした。(倫理的配慮)各対象者に対して質問紙は無記名とし、質問紙前文で調査趣旨、協力の可否は対象者の個人的意思に基づくものであること、個人が特定されないようにデータ管理は厳重に行うことを説明し、回収は郵送法とした。(分析方法)統計ソフトSPSS を用いて、記述統計および独立性の検定を行った。<BR>〈結果〉質問紙の回収率は68.1%であった。対象者の平均年齢は54.6歳であり、術後化学療法を行った患者は32.6%であった。術後、進行度により補助療法として化学療法が行われる。本研究において、術後化学療法を行った患者は対象者全体の約1/3であり、病期が進行していた患者が多いことがうかがわれる。受診への抵抗感について「あった群」は57.6%であった。症状出現から受診までの期間が3ヶ月以上の患者が42.4%と最も多く、1ヶ月以内が32.6%、最も短い1週間以内は25.0%であった。抵抗感と受診までの期間、受診までの期間と化学療法には有意傾向にある差が認められた。(P<0.01 社会学的統計処理による)抵抗感に関連した要因として「内診」がどの年齢層においても最も多く、40.7 %であった。続いて「検査や処置の内容が不明で不安がある。」が24.0%であったが、30歳代でこの項目を選択した患者はいなかった。以上のことから、受診への抵抗感を軽減することが受診までの期間を短くし、受診までの期間を短くすることが病気の進行を遅らせる可能性があると示唆された。そのために私たち看護師に最も求められることは羞恥心を低減させるための身体露出に対する配慮、予期不安を低減させるための婦人科受診についての情報の提供であると考えられる。身体露出部位、露出時間を最小限にするための配慮と患者が安心できるような雰囲気づくりに努め、外来待合室などでの検査、処置内容の表示など患者が手軽に情報を得られるような環境づくり、地域での情報公開活動などを今後検討していきたい。