著者
北中 千史
出版者
国立がんセンター
雑誌
特定領域研究(C)
巻号頁・発行日
2000

神経芽腫は自然退縮がしばしば見られる癌としてよく知られているが、そのメカニズムについてはほとんどわかっていない。神経芽腫の自然退縮のプロセスにアポトーシスとは異なったプログラム細胞死の関与が示唆されていること、Rasの発現が神経芽腫の予後良好因子であることなどに加え、最近の我々の研究からRasがヒトがん細胞に細胞特異的に非アポトーシス性プログラム細胞死を誘導することが明らかになってきた。これらの事実から我々は神経芽腫におけるRas蛋白質の高発現がアポトーシスとは異なったプログラム細胞死を誘導し、その結果腫瘍の自然退縮が起きているのではないかと考えた。この点を確認するためにまず神経芽腫の腫瘍サンプルを用いた免疫染色を行ったところ、自然退縮を起こしやすい神経芽腫のサブグループにおいてRasの高発現部位に一致してアポトーシスとは異なる細胞変性が高頻度に起きていることを認めた。また、in vitroにおいても、腫瘍サンプルで認められた所見に一致して、Rasの発現が神経芽腫細胞にアポトーシスとは異なった細胞死を誘導することを確認した。これらの結果はRasにより誘導される非アポトーシス性プログラム細胞死が神経芽腫の自然退縮に寄与している可能性を強く示唆している。
著者
北中 千史 根本 建二 佐藤 篤
出版者
山形大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究ではグリオブラストーマ幹細胞を非幹細胞に分化誘導できる薬剤の探索を行った。その結果、糖尿病治療薬であるメトホルミンがFoxO3a活性化によりグリオブラストーマ幹細胞を非幹細胞化することを見出した。また、グリオブラストーマ幹細胞維持にシグナルキナーゼJNKが必須の役割を果たしていることを見出し、JNK阻害薬がグリオブラストーマ幹細胞を非幹細胞化する作用を有することを明らかにした。