著者
杉村 泰 Yasushi SUGIMURA 北京第二外国語学院日本語学部外国人講師 Foreign Expert The Japanese Department Beijing Second Foreign Language Institute
出版者
国際交流基金日本語国際センタ-
雑誌
世界の日本語教育 (ISSN:09172920)
巻号頁・発行日
no.7, pp.233-249, 1997

本稿は「モダリティ」の観点から日本語副詞「キット」と「カナラズ」の意味分析を試みたものである。従来、「キット」と「カナラズ」は「陳述副詞」あるいは「話し手の主観的態度を表わす副詞」として位 置付けられ、その「蓋然性」の違いや「推量的機能」「習慣的機能」について諭じられてきたが、その違いはいまだ明確にはされていない。これに対して、本稿では少し角度を変えて考察し、2語とも蓋然性に関わるが、その呼応する成分のモダリティ階層が異なることを主張する。すなわち、「キット」は話し手の判断と関わり、「カナラズ」は命題内容と関わると考えるのである。そして、この呼応する成分のモダリティ的な階層の違いが、二次的に2語のさまざまな意味的な差となって現われていることを明らかにする。また、こういった現象が「キット」と「カナラズ」との間においてだけではなく、「タブン」と「タイテイ」との間にも並行してみられるものであることを指摘する。