著者
竹田 飛鳥 福田 英輝 北原 俊彦 横山 徹爾
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.183-190, 2022-03-15 (Released:2022-03-23)
参考文献数
23

目的 新型コロナウイルスの感染拡大のため,2020年4月7日に政府から緊急事態宣言が発令された。同月には厚生労働省から歯科医師の判断により緊急性がない歯科診療は延期等の留意点が周知された。本研究では歯科診療所を受診した患者を対象に,2020年4月に発令された緊急事態宣言時における歯科受療行動を把握し,その関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 本研究の対象者は,埼玉県内の歯科診療所28施設を2020年9月に来院した患者1,335人のうち,有効回答があった1,227人とした。歯科受診の項目に回答があり,かつ緊急事態宣言時に歯科受診の意向があった者(611人)のなかで,受診を控えた者を「未受診群」(214人),受診した者を「受診群」(397人)として分析を行った。結果 多変量ロジスティック回帰分析による「受診群」に対する「未受診群」のオッズ比は,女性で1.69(95%Cl: 1.12, 2.55),65歳未満で2.91(95%Cl: 1.88, 4.49),月1回未満の受診で1.71(95%Cl: 1.04, 2.82),緊急事態宣言中の予約なしで7.12(95%Cl: 4.56, 11.11)であり,いずれも有意に大きかった。結論 緊急事態宣言時に歯科受診の意向がありながらも受診を控えた「未受診群」の割合は35%であった。「未受診群」と関連があった項目は,女性,65歳未満の者,受診頻度月1回未満の者,および予約がない者であった。