著者
福本 恵美子 川崎 浩二 林田 秀明 古堅 麗子 北村 雅保 福田 英輝 川下 由美子 飯島 洋一 齋藤 俊行
出版者
有限責任中間法人日本口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.57, no.3, pp.176-183, 2007-07-30

指しゃぶりは約半数の乳幼児が経験していると報告されており,その習慣化は歯列に大きく影響を与える.本研究の目的は,指しゃぶりの誘発とその習慣化の要因を明らかにすることである.3歳児健康診査を受診した3歳児(36〜47か月)512名を対象とした横断調査をもとに,指しゃぶりの開始と習慣化に関連する要因について分析した.対象者の36.3%が指しゃぶりを経験していた.3歳児健康診査時において指しゃぶりが習慣化している児の割合は,全対象者の15.8%,指しゃぶり経験者の43.5%であった.指しゃぶり開始の要因解析結果から,有意であったものは「郡部」と「兄弟姉妹の指しゃぶり有」であり,オッズ比はそれぞれ1.67(p<0.05),3.05(p<0.001)であった.指しゃぶり経験者における,その習慣化にかかわる要因解析では,「郡部」「弟妹の妊娠無」「母乳終了月齢12か月未満」で有意な関連が認められ,オッズ比はそれぞれ2.56(p<0.05),5.00(p<0.05),6.14(p<0.001)であった.以上の結果から,指しゃぶりの開始には「郡部」「兄弟姉妹の指しゃぶり有」が誘発要因として挙げられ,指しゃぶりの習慣化を防ぐためには母乳栄養を少なくとも生後12か月までは継続することが重要であることがわかった.
著者
竹田 飛鳥 福田 英輝 北原 俊彦 横山 徹爾
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.183-190, 2022-03-15 (Released:2022-03-23)
参考文献数
23

目的 新型コロナウイルスの感染拡大のため,2020年4月7日に政府から緊急事態宣言が発令された。同月には厚生労働省から歯科医師の判断により緊急性がない歯科診療は延期等の留意点が周知された。本研究では歯科診療所を受診した患者を対象に,2020年4月に発令された緊急事態宣言時における歯科受療行動を把握し,その関連する要因を明らかにすることを目的とした。方法 本研究の対象者は,埼玉県内の歯科診療所28施設を2020年9月に来院した患者1,335人のうち,有効回答があった1,227人とした。歯科受診の項目に回答があり,かつ緊急事態宣言時に歯科受診の意向があった者(611人)のなかで,受診を控えた者を「未受診群」(214人),受診した者を「受診群」(397人)として分析を行った。結果 多変量ロジスティック回帰分析による「受診群」に対する「未受診群」のオッズ比は,女性で1.69(95%Cl: 1.12, 2.55),65歳未満で2.91(95%Cl: 1.88, 4.49),月1回未満の受診で1.71(95%Cl: 1.04, 2.82),緊急事態宣言中の予約なしで7.12(95%Cl: 4.56, 11.11)であり,いずれも有意に大きかった。結論 緊急事態宣言時に歯科受診の意向がありながらも受診を控えた「未受診群」の割合は35%であった。「未受診群」と関連があった項目は,女性,65歳未満の者,受診頻度月1回未満の者,および予約がない者であった。
著者
岩﨑 理浩 福田 英輝 林田 秀明 北村 雅保 小山 善哉 介田 圭 川崎 浩二 前田 隆浩 齋藤 俊行
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.66, no.5, pp.445-451, 2016 (Released:2016-12-08)
参考文献数
19

長崎県内には51の有人島があるが,離島は本土と比較して現在歯数が少ない.これは離島特有の歯科医院へのアクセスの悪さが関係していると考えられている.しかし,同じ離島であっても歯科医院の有無が現在歯数に与える影響や無歯科医離島住民の受療行動についての研究はなされていなかった.そこで,平成17年以降長崎大学が実施した五島市での口腔内診査と,平成22年に五島市が実施した無歯科医離島における歯科受療に関するアンケート調査を用いて,口腔内の現状と受療行動について分析した.その結果,無歯科医離島は,歯科医院のある離島と比較して平均現在歯数が有意(p<0.01)に少なく(無歯科医離島:10.8±10.5本,歯科医院のある離島:15.9±10.4本),無歯顎者の割合が有意(p<0.01)に高かった(無歯科医離島32.3%,歯科医院のある離島15.6%).また,住民の約半数の者が治療回数を減らすために抜歯を他の治療よりも優先した経験を有すること,約9割の者が島内での歯科受療を希望していることが明らかとなった.これより,無歯科医離島では,時間的,地理的制約から歯科医療機関への頻回のアクセスが困難であるため,治療回数を減らすために抜歯することが,当該地区の平均現在歯数が少なく,無歯顎者の割合が高い理由の一つと考えられた.本調査結果より,無歯科医離島における歯科医療サービスの提供体制の構築が急がれるとともに,予防対策の充実を図る必要性が示唆された.