著者
尾藤 朋子 北原 節子
出版者
Japanese Society of Water Treatment Biology
雑誌
日本水処理生物学会誌 (ISSN:09106758)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.16-23, 1983-08-30 (Released:2010-02-26)
参考文献数
18

開殻運動を利用した細菌汚染カキの浄化は止水式の場合, 換水間隔が長いと排出菌の再とりこみが推定され, これによる浄化効率の低下がみられた。また, 換水間隔が2時間と短かい場合には浄化効果は顕著であったが, しかし, 実用化するには施設上の問題点が残される。また, 流水式による換水浄化は前記の各実験成績から浄化用海水量 (換水回数) を増加して短時間浄化を計るよりも, むしろカキの自然開殻運動の理にかなった長時間浄化を実施した方が効率の高いことがわかった。カキの汚染時間の相違による浄化効率への影響は換水回数が少ない場合には短時間汚染の方が浄化効率は高いが, 換水回数を増すと短時間汚染カキと長時間汚染カキの間には大差がみられなかった。その原因としては, 本実験の流水式浄化装置への海水の注入がシャワー方式であるたあ, 流量が多くなると水槽水面に刺戟がおこって, カキの正常な開殻運動が阻害されることが考えられる。また, 本実験の各成績からカキの浄化には浄化限界値の存在が確認されており, この浄化限界の解明, さらにはその解消が今後の問題として残される。本現象の生じる原因には, 1) RI標識菌からRI (203Hg) が脱離し, 貝体内に残留, 2) 浄化用水中に排出された汚染菌体の再とりこみ, 3) 貝体部位中の標識菌が排出されず長期に残留, などが考えられ, これらに対する対策としては, もしその原因が1) ならば, 単なるバックグランド値として上記に準じてその値を差引くだけで解決出来, 原因2) ならば浄化装置の形状の改良などによって排出菌の早期除去を計るなどの方法が考えられる。また, 原因3) は貝体臓器部位, 例えば消化盲のう内の汚染菌の長期残留が最も可能性が高いと思われるが, 本要因に関する対策が最も困難で, 文字通り, 浄化限界となる恐れが多いと考えられる。また, 貝肉の汚染除去にのみ注目して, その浄化に焦点をあてているが, 本実験成績の一部からカキ殻の汚染とその除去についても無視できないことも明らかである。