著者
北島 尚治 北島 明美 北島 清治
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.1, pp.55-62, 2020-01-20 (Released:2020-02-05)
参考文献数
24

耳管開放症は耳管が開放しているために鼻咽腔内の音や圧が低減衰のまま中耳に伝わる疾患で, 耳閉感や自声強聴, 自己呼吸音の聴取などが主訴となる. 症例は開放耳管を伴うダイバー患者14例である. ダイビングトラブルに関する詳細な問診, 耳管機能検査を含めた神経耳科的検査を施行した. 耳管機能検査には音響法とインピーダンス法を用いた. 14例中8例が耳違和感, 1例が中耳気圧外傷 (MEB), 5例が内耳気圧外傷 (IEB) であった. MEB 症例のうち1例は圧変動性めまい (AV) を生じていた. 14例中8例が浮上時に発症し, 急速潜降した2例で AV と IEB を生じた. 正常ダイバーとの比較で音響法・インピーダンス法ともに有意差を認めたが, 各患者の正常耳と患側耳との比較では音響法でのみ有意差を認めた. 内耳障害の有無での比較では, 耳管機能に有意差を認めなかった. 開放耳管ダイバー患者は急速潜降で内耳障害を生じやすく, 急速な圧変化に加え耳抜き時の過剰加圧が原因と思われた. 浮上時の IEB は中耳腔含気が膨張し蝸牛への過大な圧力を引き起こしたためと考えられ, 浮上速度を遅め嚥下運動で経耳管的に圧を逃がすことが対策と考えた.