著者
北川 邦一
出版者
大手前大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

1.ノルウェー高校(全日制3年相当)の全生徒必修普通科目「社会科」を日本の関係科目と比べると、前者の教育は政治的影響からの自律性が強く、国定の教科基準事項は限定的で、共通教育内容は明確、教科書は重点事項に記述を絞り内容深く現実性豊かである。2.現行ノルウェー憲法は、福音的ルーテル派キリスト教を国教と定めており、1998年法律第1号「教育法」は、10年制義務制学校のキリスト教、宗教、人生観に関する科目KRLの在り方を定めている。しかし、国教特別扱いに関する国連人権委員会への異議提訴もあって、教育法は2002、05年に改正され、KRLは、2006/07学年度からの教育課程全般改訂より早く05年8月に改訂された。国教とその教育の現代的あり方が課題となっている。3.同国では初、中等学校とも管理運営への生徒・親代表参加制度がある。「校則」は通常、各地方自治体内共通内容と学校独自内容から成る。生徒管理・生活指導一般は寛容であるが、出欠など基本的事項の規定は日本より厳格であり、北欧に特有の規定もある。生活指導では「良い学校は明確なきまりを定め、実行し、積極的品行に報いる」という教育研究省UFDの2003年報告書の方針が学校に一定の普及を見た。4.教育行政では2004年、国の省に教育管理庁UDIRが設置され、初等中等教育の管理・開発・研究権限はこれに大幅委任された。諸国際学力調査結果におけるノルウェーの「成果不振」を背景に、保守・中道右派連立政権下で同年、UFDと主要な全国的教員団体・教育団体の合意で教育における能力開発kompetanseutviking戦略(2005-2008)が開始され、2006/07年度初等中等教育課程改革の大筋が定められた。しかし、2005年9月の国会選挙で政権は右派・中道連立から中道・左派連立に移行し、UFDは教育省KDへと改組された。教育政策の変化が注目される。