著者
北村 克郎
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.123-162, 2017 (Released:2017-11-20)
参考文献数
20

国際バカロレアの四つの教育プログラムはアクティブ・ラーニングを基にしている。その中でも、初等教育プログラムには最もよくアクティブ・ラーニングの性格が表れている。 初等教育プログラムと他のアクティブ・ラーニングとの一番大きな違いは、教科の枠を超えたテーマについての探究と、概念的な学びである。特に概念的な思考と学びをアクティブ・ラーニングに活用するための可能性を探究することは、アクティブ・ラーニングを発展させることに大きく貢献すると考える。 ところで、初等教育プログラムの概念的な学びに用いられる八つの概念は、対象の本質の把握に向かって深化していく認識の、どの段階に相当するかが明らかではない。八つの概念は単に羅列されているに過ぎない。そこで、私はヘーゲルの論理学の推理論に依拠しつつ、各概念の妥当性と限界性を明らかにしようと考える。そして、各概念を用いて、「教科の枠を超えたテーマ」のセントラル・イデアに向かってどのような概念的思考が可能かを具体的に考察するつもりである。 翻って、各概念的認識には、どのような要件が必要かも併せて明らかになるはずである。
著者
北村 克郎
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要 (ISSN:24334618)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.47-74, 2016-03-01 (Released:2017-11-20)

国際バカロレア(以下IB)の初等教育プログラム(以下PYP)は「概念-操作」カリキュラムである。PYPの「概念-操作」カリキュラムが、他の構成主義の学びの方法に対してたいへん優れているのは、その道具立てがしっかりしているためである。この道具立ての一つである「概念に基づく学び」(concept based learning)はとりわけ重要なものであるが、八つの「概念」は、相互の間の関係が規定されていない。そこで、諸概念との関係や、その位置づけと役割と限界を明らかにした、ヘーゲルの論理学の「概念論」の「主観的概念」における「判断論」を認識論的に読み直すことにより、PYPの諸概念の役割と限界と相互の関係を認識の深化のプロセスの中に位置づけようと考える。そして、その準備作業として、まず、ヘーゲルの判断論を認識論的に概観してみたい。そのためには、特殊の役割に注目して判断論を理解しなくてはならない。