著者
北村 秀明
出版者
新潟医学会
雑誌
新潟医学会雑誌 (ISSN:00290440)
巻号頁・発行日
vol.121, no.5, pp.258-260, 2007-05

新潟大学臨床研修病院群プログラムにおける精神科研修では,研修医は基本的に全員,8つの精神科協力病院(以下協力病院),すなわち黒川病院,松浜病院,新潟信愛病院,三島病院,県立精神医療センター,田宮病院,五日町病院,さいがた病院のいずれかで研修する.ただし週に1日,新潟大学医歯学総合病院(以下大学病院)で研修する.大学病院と協力病院の機能分化を考え,プライマリー・ケアでしばしば遭遇するうつ病や不安障害から,機能レベルの低下が重篤な統合失調症や痴呆性疾患まで広くカバーして,頻度の高い精神疾患について基本的な技能を獲得できるように,この二重体制が採用された.しかしながら,大学病院および協力病院の研修指導医へのアンケートから,いくつかの問題点が浮き彫りになった.その多くはこの二重体制に関係するものであり,遠くの協力病院から大学病院へ週1回通うことの身体的・精神的負担,研修の継続性の阻害,指導内容の分担に関する両病院間の連絡不足などが指摘された.そもそも二重体制を敷くほど両病院は機能分化しているのか,といった根本的な疑念を述べた指導医もいた.ただし大学病院での研修のメリットも多く存在するのもまた事実である.欧米では当たり前の操作的診断基準を用いた厳密な精神科診断プロセスなどは,十分な指導時間がとれる大学病院でないとその教育は難しいのも現状である.今後はプログラムのユーザーである研修医の意見も参考に,来シーズンの状況も加味しながら,プログラムは改良され続けるべきと考える.