著者
辻 佑木生 中山 貴博 坊野 恵子 北村 美月 今福 一郎
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.423-428, 2014-05-01 (Released:2014-06-17)
参考文献数
15
被引用文献数
7 7

症例1は35歳男性である.6ヵ月前より禿頭予防にフィナステリド1 mg/日を内服していた.頭痛と痙攣発作を発症し,右前頭葉に出血をともなう低吸収域をみとめ,CT venography(CTV)で脳静脈洞血栓症と診断した.症例2は41歳男性である.2年前より禿頭のためフィナステリド1 mg/日,ミノキシジル6 mg/日を内服していた.頭痛を発症し,左頭頂側頭葉に散在する脳梗塞をみとめた.フィナステリド服用中の血栓症発症は,医薬品医療機器総合機構(The Japan Pharmaceutical and Medical Devices Agency; PMDA)へは,当院例を併せて14症例報告があり,脳卒中4例,心筋梗塞6例,その他4例であった.フィナステリドによるエストロゲン上昇の報告があり,血栓症発症への関与が考えられた.
著者
戸村 九月 川﨑 怜子 北村 美月 中山 貴博 今福 一郎
出版者
特定非営利活動法人 日本脳神経血管内治療学会
雑誌
脳血管内治療 (ISSN:24239119)
巻号頁・発行日
pp.cr.2020-0015, (Released:2020-11-24)
参考文献数
20

【目的】血栓回収後に過灌流症候群(CHS)と非痙攣性てんかん重積状態(NCSE)が疑われた 1 例を経験したので報告する.【症例】68 歳女性,意識障害を主訴に救急搬送.左中大脳動脈(MCA)閉塞の診断で血栓回収療法を施行して完全再開通を得たが,意識障害の遷延を認めた.治療同日のMRI では DWI 所見は消失し,再開通を維持していたが,第 3 病日の MRI で虚血領域の皮質を中心とした高信号と同領域の脳血流上昇を認め,脳波所見と併せて CHS と NCSE の並存が疑われた.内科的加療により臨床症状は徐々に改善を認めたが,高次脳機能障害が残存した.【結論】血栓回収後に治療経過に見合わない意識障害の遷延や悪化を来す場合,CHS や NCSE を鑑別診断に挙げた精査を行う必要がある.