著者
北﨑 勇帆
出版者
日本語学会
雑誌
日本語の研究 (ISSN:13495119)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.1-17, 2016-10-01 (Released:2017-04-03)
参考文献数
27

本稿では, 動詞「あり」「す(る)」の命令形を用いて逆接仮定的な構文を作る複合助詞「であれ」「にせよ」「にしろ」について, その形態の歴史的変遷を調査した。「であれ」相当形式は中古に「用言連用形+もあれ」「体言+にもあれ」として発生し, 中世以降, 体言が前接する場合に限って「にてもあれ」「でもあれ」へと姿を変える。「にせよ」「にしろ」相当形式は中世頃に「動詞連用形+もせよ」として発生し, 近世に「にもせよ」「にもしろ」が現れると, 次第に「であれ」相当形式の使用数を上回る。この移行の要因として, 動作についての逆接仮定を示すために補助動詞「す」が採用されたこと, 体言・用言のいずれに対しても同形態で接続できる「にもせよ」「にもしろ」に利便性があったことを論じた。
著者
北﨑 勇帆
雑誌
研究報告人文科学とコンピュータ(CH) (ISSN:21888957)
巻号頁・発行日
vol.2015-CH-106, no.5, pp.1-6, 2015-05-09

洒落本は,近世期に刊行された小説の一形態であり,近世日本語の口語資料としての有用性が高い.この洒落本には,書名や話の粗筋を同一にしながら,江戸板・上方板で内容や語彙に異同のある作品が存在する.上方で刊行されたものが後に江戸で改作された 『月花余情』 組と,江戸で刊行されたものが後に上方で刊行された 『郭中奇譚』 組である.本稿ではそのような江戸・上方間で改作が行われた洒落本のテキストを TEI P5 に準拠してマークアップすることにより,当時の東西言語の比較資料として用いることができる対照コーパスを構築した.