著者
南雲 千香子
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.10, pp.69-84, 2012-03-28

本稿では近代日本語研究の一環として、明治期に大量に日本へ流入した専門用語、その中でも法律用語に焦点を絞り、漢語の観点から考察を行った。その事例研究として、現在の法律用語に大きな影響を与えている箕作麟祥訳『仏蘭西法律書・訴訟法』を取り上げ、箕作麟祥がどのように法律用語を漢語訳していたかを明らかにすることを目的とした。 『仏蘭西法律書・訴訟法』の漢語から箕作麟祥が作った、あるいは法律的な意味を加えたと思われる漢語を選別し3 グループに分類した。その中から典型的な特徴を現している4 つの語を取り上げ、詳しく語の成立を見た。その結果を基に、『仏蘭西法律書・訴訟法』の漢語を改めて5グループに分類した。『仏蘭西法律所・訴訟法』よりも用例を遡ることが出来ないもの、あるいは『仏蘭西法律書・訴訟法』以外で用例を見ることが出来ないもの、日本や中国の古典籍などで使用されている語を法律用語として使用しているものが『仏蘭西法律書・訴訟法』の漢語の大半を占めていることがわかった。このことから、主に箕作麟祥自身が新たに語を作る、あるいは古くから存在している語を転用して、法律用語へ当てはめる方針を取っていたことが明らかになった。
著者
南雲 千香子
出版者
大学共同利用機関法人人間文化研究機構国立国語研究所
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2017-08-25

本研究の目標である「明治期の法律用語の成立パターンの解明」のため、本年度は次のことを行った。1、箕作麟祥『仏蘭西法律書 民法』で使用されている法律用語が、明治23年に公布された日本民法(旧民法)、明治29年に施行された日本民法の中でも同様に使用されているか、あるは別の用語に置き換わっているかどうかを調査し、「3つの資料で同じ用語が使われているもの」、「『仏蘭西法律書 民法』のみ用語が異なるもの」、「3つの資料でそれぞれ用語が異なるもの」の3カテゴリーに分類した。2、上記のカテゴリーのうち、「3つの資料で同じ用語が使われているもの」について、さらに詳細な用語の変遷の調査を行った。その結果、①『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」、「明治民法」で共通して使用されている用語の数そのものは少ない(13語)。②『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」で共通して使用されている用語は、民法草案でも用語の変遷がほとんどなく、『仏蘭西法律書 民法』刊行後すぐに用語が固定されていた。③『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」で共通して使用されている用語について詳しく見てみると、一般語として過去に日本で使用のあった語が多いという傾向がある、ということが明らかになった。これらのことから『仏蘭西法律書 民法』、「旧民法」、「明治民法」で共通して使用された用語は少なかったが、これらが『仏蘭西法律書 民法』刊行以後に編纂された民法草案では同じ用語がほぼ一貫して使われていたこと、「不動産」という新漢語の定着が、他の法学資料に比べ、民法草案では早かったことなどから、『仏蘭西法律書』の影響力や日本民法編纂事業における箕作の活躍が大きかったことが窺える。(なお、この調査結果については2017年度第1回近代語学会において口頭発表を行った。)3、自身の作業効率化及び、明治法律用語研究の進展のため、法制史資料のテキスト化を行った。
著者
南雲 千香子
出版者
学習院大学
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.10, pp.69-84, 2011

本稿では近代日本語研究の一環として、明治期に大量に日本へ流入した専門用語、その中でも法律用語に焦点を絞り、漢語の観点から考察を行った。その事例研究として、現在の法律用語に大きな影響を与えている箕作麟祥訳『仏蘭西法律書・訴訟法』を取り上げ、箕作麟祥がどのように法律用語を漢語訳していたかを明らかにすることを目的とした。 『仏蘭西法律書・訴訟法』の漢語から箕作麟祥が作った、あるいは法律的な意味を加えたと思われる漢語を選別し3 グループに分類した。その中から典型的な特徴を現している4 つの語を取り上げ、詳しく語の成立を見た。その結果を基に、『仏蘭西法律書・訴訟法』の漢語を改めて5グループに分類した。『仏蘭西法律所・訴訟法』よりも用例を遡ることが出来ないもの、あるいは『仏蘭西法律書・訴訟法』以外で用例を見ることが出来ないもの、日本や中国の古典籍などで使用されている語を法律用語として使用しているものが『仏蘭西法律書・訴訟法』の漢語の大半を占めていることがわかった。このことから、主に箕作麟祥自身が新たに語を作る、あるいは古くから存在している語を転用して、法律用語へ当てはめる方針を取っていたことが明らかになった。This paper will examine legal terms in the Meiji era from the perspective of Sino-Japanese relation as part of a study on modern Japanese languages. As a case study, legal terms in Furansu-Hôritsusho-Soshôhô(仏蘭西法律書・訴訟法)were translated into Sino-Japanese by Rinshô MITSUKURI. First, I classified Sino-Japanese into three categories according to their source. Second, I selected four words in each category and researched the history of them. On the basis of this research, I classified Sino-Japanese again in greater detail. This classification revealed that Rinshô MITSUKURI created a new Sino-Japanese to translate Furansu-Hôritsusho-Soshôhô and used terms had which existed from ancient times as legal terms.