著者
十亀 好雄
出版者
甲子園短期大学
雑誌
甲子園短期大学紀要 (ISSN:0912506X)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-14, 1984-10-10

1.国内におけるイチョウの分布は、北海道及び南西諸島地区に少なく、これは、気温・水気・風などの重要な気候要素によって、山地や海岸(含離島)でのイチョウの生育が悪いためである。2.わが国でのイチョウは、神社・寺院での植樹(33.8%)が最も多く、海外では公園(31.5%)での植樹が最も多い。国内の神社・寺院にイチョウが多く植樹されているのは仏教の伝来にともなって中国から移入されたという説を実証している。3.世界におけるイチョウの地理的分布は、北半球での南限は中央アメリカのメキシコシティー(19°24'N)、北限はアラスカのアンカレッジ(61°10'N)であり、南半球では南アフリカ共和国のプレトリア(25°25'S)から、ニュージランドのダニーディン(45゜53'S)までの範囲に分布している。また、赤道地帯を含む南・北緯20°以内にはイチョウの栽植分布は認められず、北緯20゜〜60°、南緯20゜〜50°の範囲内において栽植の分布が確認できる。4.世界でのイチョウの分布と気候条件については、年平均気温がO゜〜20℃の範囲内で生育がみられ、植物分布と関係の深い低温の限界温度はO℃の等温線である。さらに、降水量については、今年500〜2000mmの地域に分布が認められる。本研究の一部は昭和58年度第22回下中科学研究助成金の交付によっておこなった。