著者
千綿 かおる 武田 文
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.206-213, 2010
参考文献数
17

本研究は,知的障害者施設入所者への職員の歯磨き介助に対する負担感(以下,歯磨き介助負担感)が職員個人に関する要因や歯磨き介助の要因とどのように関連しているかを明らかにすることを目的とした.東海地区の一県内に所在する知的障害者入所施設43施設のうち協力の得られた27施設職員527名に無記名自記式質問紙調査を行い,有効回答393名(74.6%)について分析した.歯磨き介助負担感と各変数との関連について単変量解析を行い,有意な関連の認められた変数について相互に強い相関のないことを確認したうえで独立変数として投入し,歯磨き介助負担感の有無を従属変数とする多重ロジスティック回帰分析を行った.その結果,歯磨き介助負担感と単独で有意な関連が認められた項目は,職員の性別が「男性」(OR=2.31;95% CI=1.39-3.84),歯磨き介助対象者の状況のうち「歯肉が腫れている」者が多い(OR=2.96;95% CI=1.79-4.90),歯磨き介助時に「頬側を磨く頻度が少ない」(OR=2.45;95% CI=1.48-4.08),「入所者に口を開けてもらえなくて困る」(OR=2.61;95% CI=1.54-4.42),「歯磨き姿勢が難しくて困る」(OR=1.99;95% CI=1.13-3.53),「歯磨き時間が短くて困る」(OR=1.85;95% CI=1.02-3.35)であった.以上のことから,知的障害者施設入所者への職員の歯磨き介助負担感を軽減するうえで,男性職員に対する歯磨き介助技術向上の支援,入所者の口腔状態に対応した歯磨き介助方法を学ぶ研修,歯磨き介助が必要な部位を特定できるPlaque Control Record等の利用,短時間で歯磨き介助ができる電動歯ブラシの使用,歯磨き介助効果をあげるフッ化物応用等を検討する必要があると考えられた.