著者
所 和彦 津田 昌子 千葉 康洋
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.14-18, 2003 (Released:2011-07-05)
参考文献数
20
被引用文献数
1

4年間で経験した視床出血70例の失語症、半側空間無視(以下USN)、注意障害等の高次脳機能障害の転帰への影響を分析した。平均年齢63歳。CT上の血腫量、失語症、USN、注意障害の程度を分析し、ADL・転帰はFIMで評価した。右視床出血42例で、左USNは25例60%で認め、中等度から重度のUSNは19%であった。血腫量は、右USNなしで4.5±3.0ml、右USNありで9.7±5.9mlと、USNがあると血腫は有意に増大した。左視床出血は28例あり、失語症は16例(57%)で認め、中等度から重度の失語症は18%であった。失語症なし群の血腫量は5.0±2.7ml、あり群は9.5±46mlで、失語症があると血腫は有意に増大した。右USNを5例18%で認めた。失行はUSN重度の右出血1例、左出血1例に認めた。血腫量と白質への進展の程度は、USN、失語症の重症度に有意に相関した。右出血ではUSN、左出血では失語症・USNがあると入院時および退院時FIMは有意に低下した。注意障害が重度なほど、転倒の回数が多いほど、血腫は有意に大きく、入院・退院時のFIMも低値を示した。歩行の転帰が良好な症例ほど入院時および退院時FIMは良好であった。血腫量、年齢は、入院時FIMと退院時FIMと負の相関関係を示した。視床出血では、左右出血とも血腫量が多いほど、高齢者ほど、入院時FIMが低いほど、USN、失語症または注意障害が重度なほど、歩行能力が不良なほど退院時の転帰が不良であった。