- 著者
-
高野 忠
牧謙 一郎
相馬 央令子
千葉 茂生
前田 崇
藤原 顕
吉田 真吾
- 出版者
- 社団法人 物理探査学会
- 雑誌
- 物理探査 (ISSN:09127984)
- 巻号頁・発行日
- vol.59, no.6, pp.561-573, 2006 (Released:2010-06-18)
- 参考文献数
- 40
超高速な衝突や静的な圧力で物質を破壊する時,マイクロ波が発生することが見出された。本論文では,この現象を観測するための実験系,得られた内容・事実,そして物理探査に応用する可能性について述べる。この分野は多くの読者にこれまで余りなじみがないと思われ,かつ瞬発マイクロ波の受信・計測という特殊な技術を用いるので,全体的な記述に重きを置き詳細は省く。受信系では、まずマイクロ波信号を低雑音増幅器で増幅した後,観測する周波数にたいし十分高い標本化周波数でディジタル化して,データを取り込む。観測周波数としては,22GHz,2GHz,300MHz,1MHzを選んだ。データが多すぎて蓄積容量が足りない時は(22GHzと2GHz),ヘテロダイン受信で周波数を落としてからデータとする。 衝突実験における速度は最高約7km/secである。衝突標的の材料はアルミニウム,鉄などの金属,セラミック,煉瓦,ゴムなどを用いた。静的な圧力での破壊実験には,4種の岩石をコンプレッサで加圧した。得られたマイクロ波は,いずれの破壊モード・材料においても,断続的な極めて狭いパルス状である。岩石の静的圧力での破壊では,22GHzは硅石でのみ観測された。このようにして得られた波形は,パルス内でほぼ正弦波状なので,受信系を通して電力校正が可能である。その結果平均発生電力は2GHzにおいて,超高速衝突の実験で 2.7×10-5mW,静的圧力の実験で2.7×10-8mWであった。マイクロ波発生原因として原子あるいは分子間の結合が切れることが推定されるが,未だ確定するには至っていない。本現象は,次のような分野の物理探査に応用することを考えている。 (1)物質の性質探求:天体衝突現象,材料科学,宇宙デブリ問題 (2)地下構造の変動:岩石の破壊 (3)地震の探査