著者
石井 延久 藤岡 知昭 新藤 雅章 胡口 正秀 近田 龍一郎 前原 郁夫 千葉 隆一 亀井 重郎 常盤 峻士
出版者
社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.75, no.3, pp.484-489, 1984 (Released:2010-07-23)
参考文献数
9

従来より埋没陰茎 (buried penis) のはっきりした定義は余りなく, 潜在陰茎 (concealed penis) も埋没陰茎に含まれると考えられることが多かった. しかし, 埋没陰茎は陰茎皮膚外板が極端に不足しているために陰茎が皮下に埋没してみえる奇形であり, 真性包茎を伴っているのが普通である.一方, 潜在陰茎は陰茎の皮膚は十分あるが, 肥満やその他の理由により陰茎が周囲の脂肪内にかくれてしまう奇形である. この場合は包茎の有無と陰茎の埋没に直接関連性はない. また両奇形とも陰茎は正常に触知されることにより micropenis とは鑑別できる.今回, 我々は10例の埋没陰茎に対してZ形成術を利用して陰茎形成術を施行し, 良好な成績であったので報告する. 症例は1歳~12歳の児童で術後経過は1カ月~3年観察している. 術後の合併症では1例が約3カ月位まで一過性の浮腫がみられたが, 他の症例はいずれも変形や機能障害はみられず, 二次手術を必要とした症例は1例もない.本手術は背面切開手術に比較すると術後の変形はなく, 自然の陰茎の形態が保れ, 手術方法も極めて簡単である. さらにZ形成術は術後に直線状の瘢痕を形成することがないので陰茎の如き機能的な器官の手術には広く応用できると考えられる.
著者
石井延久 渡辺 博幸 入沢 千晶 菊地 悦啓 川村 俊三 鈴木 騏一 千葉 隆一 常盤 峻士 白井 将文
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.77, pp.954-962, 1986
被引用文献数
5

従来より,我々は器質的インポテンスの治療に陰茎プロステーシスの挿入手術を行っていた.しかし,我国では陰茎プロステーシスの挿入手術を希望する患者は実際には余り多くないことから,非観血的な方法が望まれていた.そこで我々は強力な血管平滑筋の弛緩作用を有するProstaglandin E_1(PGE_1)の陰茎海綿体注射が器質的インポテンスの治療に応用できるか否かを検討した.方法は22〜27Gの細い翼状針を用いて,2〜20mlの生理的食塩水に溶解したPGE_1 20μgを注入し,その前後の変化を陰茎温度とErectiometerで観察した.動注は血管カテーテルを用いて生理的食塩水20mlに溶解したPGE_1 20μgを注入した.結果はPGE_1を陰茎海綿体に注射した71例のうち,51例(72%)に完全勃起がみられた.のこる9例(13%)は不完全な勃起,6例(8%)は陰茎の増大のみ,5例(7%)は全く変化がみられなかった.完全勃起はPGE_1注射後2〜3分で陰茎の増大がおこり,約2〜3時間持続した.PGE_1により殆ど勃起のおこらない症例は高齢者や陰茎海綿体の萎縮,血管障害の疑われた症例に多くみられた.しかし,骨盤内手術など末梢神経障害や脳・脊髄など中枢神経に器質的障害のある症例でも,PGE_1の陰茎海綿体注射により,性交可能な勃起がみられたことから,今後はPGE_1の器質的インポテンスヘの治療に応用できることがわかった.一方,PGE_1の陰茎海綿体注射により完全勃起のおこらない骨盤骨折1例と糖尿症の2例の内陰部動脈造影を行ったところ,骨盤骨折症例では内陰部動脈の損傷があり,陰茎動脈は造影されなかった.この症例は血管性のインポテンスの合併があり,PGE_1の内陰部動脈へ注入によっても陰茎の温度は余り上昇せず,勃起も回復しなかった.しかし,糖尿病の2例はいずれも陰茎動脈まで造影され,PGE_1の動注により陰茎の温度の上昇がみられ,一過性ではあるが勃起の回復がみられた.このことから,PGE_1の動注が静注など投与方法を工夫することにより,将来血管性インポテンスの治療に応用できるようになるのではないかと期待される.