著者
五十嵐 正広 岸原 輝仁 千野 晶子 田顔 夫佑樹 井出 大資 為我井 芳郎 斎藤 彰一 河内 洋
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.431-439, 2018-04-25

要旨●アメーバ性大腸炎は比較的まれな消化管感染症であったが,最近では年間1,000例以上の発症が報告されている.2005年以降当院で生検および直接鏡検で虫体,栄養体が確認された35例(男性:33例,女性:2例),平均年齢47.5歳を解析しその特徴をまとめた.有症状者は63%,無症状者37%.推定される感染経路は,異性間感染49%,同性間感染9%,不明43%.生検陽性率は89%,直接鏡検陽性率は93%,血清アメーバ抗体陽性率は53%.好発部位は,盲腸89%,直腸51%であった.特徴的な内視鏡所見は,たこいぼ様びらん・潰瘍,不整形潰瘍,打ち抜き状潰瘍,類円形潰瘍,腫瘤形成様潰瘍などで,潰瘍の易出血性や膿汁流出様所見が特徴的である.診断は内視鏡所見で疑い,生検や直接鏡検,問診による背景の確認などが重要である.
著者
十倉 淳紀 斎藤 彰一 安江 千尋 井出 大資 千野 晶子 五十嵐 正広 河内 洋
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1179-1183, 2020-08-25

臨床経過 患者は50歳代,女性. 肛門痛を主訴に近医を受診し,病変を指摘されたため当院に紹介され受診となった.既往歴に特記事項はなかった.当院の下部消化管内視鏡検査(total colonoscopy ; TCS,Fig.1)では,肛門縁から脱出する巨大な黒色腫瘤を認めた(Fig.1a〜c).また,盲腸(Fig.1d),上行結腸(Fig.1e),上部直腸(Fig.1f)にも黒色の隆起性病変や,色素沈着が散在性に認められた.さらに,上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy ; EGD)(Fig.2)では,胃角部後壁(Fig.2a),胃体中部大彎(Fig.2b)にびらんを伴う黒色の色素沈着を認めた. その他,CTにて両側鼠径リンパ節の腫大を認めた.以上より直腸肛門部原発の悪性黒色腫(anorectal malignant melanoma ; AMM)を考え,皮膚悪性黒色腫に準じたstaging(第7版AJCC皮膚メラノーマ病期分類)で,cT4bN0M1,cStage IVと診断した.肛門の疼痛,また出血のコントロール不良のため,AMMに対して経肛門的局所切除術が施行された.
著者
山﨑 明 斎藤 彰一 高松 学 河内 洋 西川 雄祐 堀江 義政 安江 千尋 山本 安則 井出 大資 千野 晶子 五十嵐 正広
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.1000-1003, 2018-06-25

疾患の概念 直腸肛門部に発生する悪性黒色腫は,直腸肛門移行部の上皮基底層に存在するメラノサイト由来と考えられている1).消化管原発の悪性黒色腫はまれであるが,直腸肛門部は食道と並び好発部位とされ,本邦における頻度は全悪性黒色腫の4.6%2),直腸肛門部悪性腫瘍の0.38%3)と報告されている.直腸肛門部悪性黒色腫の平均生存期間は8〜25か月,5年生存率は4.6〜15%と報告されており,予後不良な疾患である4).色調はメラニン色素を反映した黒色調を呈するものが多いが,肉眼的に黒色調を呈さない低色素性あるいは無色素性のamelanotic病変が6.6〜26.4%と報告されており2)3)5),診断が困難な場合がある.
著者
船津 康裕 神長 憲宏 浦上 尚之 千野 晶子 岩重 元栄 遠藤 豊 藤田 力也
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.84-93, 2001-02-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
24

クローン病の治療方針を決める指標として大腸内視鏡所見が応用可能かどうかについて臨床検討を行った.対象は成分栄養療法を行った, 大腸及び終末回腸に病変を有する23例のクローン病症例 (大腸型9例, 小腸大腸型10例, 小腸型4例) である.目的はクローン病の活動性の指標であるIOIBD, CDAI, 血沈 (ESR) , CRPと, 胃潰瘍病期分類に準じた内視鏡的潰瘍stage分類の比較を行い, 内視鏡検査の有用性を検討した.IOIBD, CDAIおよびCRP, ESRの緩解までの期間と, 内視鏡所見で潰瘍が治癒するまでの期間とを比較すると, 緩解が得られた時点での内視鏡像は治癒過程期16例 (H1stage1例, H1H2stage1例, H2stage2例, H2S1stage12例) , 瘢痕期7例 (S1stage4例, SIS2stage2例, S2stage1例) であり, 全ての潰瘍が瘢痕化 (S2stage) するには, さらに数ヶ月の期間を要した.次に緩解持続期間と緩解時の内視鏡stageの関連を検討した.S2stage (23.6±31.0月: 11例) まで改善した症例の方が, S1S2stage (7.6±6.3ヶ月: 7例) , S1stage (3.6±1.7ヶ月: 5例) までの症例に比べ有意に緩解持続期間が長かった (p<0.05) .また臨床的に緩解期と診断されていても, 内視鏡的にはすでに潰瘍が出現している症例が多かった.以上のことから, クローン病では長期間の緩解を持続させるためにはS2 stageまで治療を継続させることが重要であり, それにはより長い治療期間が必要である.また再燃に先行して内視鏡的増悪が確認できた症例が多く, 他の指標に比べ内視鏡検査は再燃の早期発見に有用であった.大腸内視鏡検査でクローン病の腸管病変を評価することは, 治療方針を決定するうえで非常に有用であった.