著者
南 庄一郎 中澤 紀子 永吉 美香
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.221-227, 2023-04-15 (Released:2023-04-15)

医療観察法病棟において,統合失調症の対象者に関わる機会を得た.本介入では対象者の「他者との会話がうまくなりたい」という希望に着目し,この実現に向けて作業療法介入プロセスモデルと社会交流評価を用いて関わった結果,対象者の対人交流技能が向上し,コミュニケーションの困難さが軽減した.危機介入モデルが先行する医療観察法医療において,作業療法介入プロセスモデルに基づいた司法精神科作業療法の実践は,対象者の保護要因を見出すことを可能にし,再犯の防止に間接的に作用すると考えられ,社会内再統合モデルに基づく医療観察法医療を推進する可能性があると考えられた.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.103-109, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
15

今回,筆者は疾病理解と服薬の必要性に関する理解の乏しさから病状が悪化し,精神科急性期病棟に入院となった統合失調症の事例に関わる機会を得た.介入経過の中で,事例が健康であった時に経験した「陶芸」が意味のある作業であることが発見され,陶芸を続けることで疾患と服薬に対する意識が変化し,自分らしい生活を送るためには服薬を継続し,健康維持を図ることが重要との認識を持つに至った.本論から,対象者の意味のある作業を中心とした「健康的な部分」に着目してアプローチすることは,「リカバリーモデル」や「ストレングスモデル」と共通性を持つと考えられ,統合失調症の急性期作業療法においても重要な視点となると考えられた.
著者
南 庄一郎 髙 登樹恵
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.701-708, 2023-12-15 (Released:2023-12-15)
参考文献数
22

本研究では児童思春期精神科医療に従事する作業療法士にフォーカス・グループ・インタビューを行い,テーマ分析によって児童思春期精神科医療における作業療法士の役割を明らかにした.本研究の結果,子どもとの関わりに作業(遊び)を活かすことは作業療法士の専門性であり,子どもの自己肯定感と自己効力感を向上させ,生きる力を育むことが作業療法士の役割と考えられた.一方,現行の診療報酬に作業療法士が明記されておらず収益に繋がらないことなどが課題として挙げられた.こうした現状を打開するべく,作業療法士同士のネットワークを構築して研鑽を図ることや児童思春期精神科作業療法の効果研究などを積み重ねていく必要がある.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.123-130, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
9

殺人未遂事件を起こした統合失調症の対象者に生活行為向上マネジメント(以下,MTDLP)を用いて関わり,「生活行為申し送り表」を通して指定通院医療機関の作業療法士と情報共有し,共に対象者の就労移行を支援した.この結果,対象者は就労継続支援事業所にてやりがいを感じられる仕事に就くことができた.本介入から,MTDLPは対象者の主体的な治療参加を動機づけ,合意目標の達成を目指して対象者と両親,専門的多職種チーム,指定通院医療機関のスタッフの連携を促進するとともに指定入院医療機関と指定通院医療機関における連携を強化し,対象者のシームレスな支援を可能にすると考えられた.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.835-842, 2021-12-15 (Released:2021-12-15)
参考文献数
10

医療観察法病棟において,殺人未遂事件を起こした統合失調症とADHDの対象者に関わる機会を得た.対象者は統合失調症の病識が乏しく,事件の内省が困難であり,医療観察法病棟の入院治療に対する意欲が持てず,介入は難航した.しかし,筆者と革細工や病棟行事の実行委員を担った体験を通して成功体験を重ね,その後の治療には自発的に参加するようになった.ここから,作業療法は医療観察法病棟での入院治療に意欲の乏しい対象者に対して,MDTによる社会復帰に向けた治療の導入部分を担い,作業を介して対象者と関係性を結び,自己効力感を高めることができ,主体的な治療への参加を可能にすると考えられた.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.110-116, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
10

今回,筆者は当院の医療観察法病棟において,重篤な精神病症状と衝動的な暴力によって,治療が停滞していた統合失調症の長期入院事例に関わる機会を得た.介入としての対話の中で,ギター演奏が事例にとって意味のある作業であることを見出した.事例はギターを演奏することを通して,治療に対する動機づけを高め,前向きに治療に取り組むことで地域生活を再開させた.医療観察法という強制医療の枠組みにおいて,対象者の意味のある作業に着目することは,対象者との関係性を構築し,ケアの進展を図る上で有用であり,長期入院化を打開する有効な手段となりうることが示唆された.
著者
南 庄一郎
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.5, pp.630-636, 2020-10-15 (Released:2020-10-15)
参考文献数
10

要旨:今回,幻覚妄想状態で警察官に暴力を振るい,当院の精神科急性期病棟に措置入院となった統合失調症と自閉スペクトラム症を併せ持つ対象者に,筆者は多職種チームの一員として関わった.本介入において,筆者は個別作業療法を通して対象者と関係性を構築し,暴力の制止を試みた.その上で,集団作業療法と統合失調症の心理教育を実施し,自宅退院に繋げた.本介入から,措置入院者への多職種チーム医療に作業療法士が参加することによって,対象者と同等な立場で関わることで関係性を構築し,対象者の特性や大切にする思いといった情報を多職種チームに提供することで,より対象者らしい生活の再開に向けた支援が可能になると考える.