著者
岩永 竜一郎 仙石 泰仁 加藤 寿宏
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.631-639, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
63
被引用文献数
1

近年,作業療法の対象患者のなかに注意欠如・多動症(Attention Deficit Hyperactivity Disorder;以下,ADHD),自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder;以下,ASD),発達性協調運動症(Developmental Coordination Disorder;以下,DCD)など,いわゆる神経発達症のある子どもや大人が増えてきている.
著者
徳田 和宏 石垣 賢和 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.673-688, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
16
被引用文献数
2

要旨:上肢機能障害へのエビデンスの多くは,生活期を対象者とするものが多く,急性期においてもエビデンスレベルの高い研究が望まれるが,急性期の時期に比較試験を行うことは容易ではない.今回,脳卒中後上肢麻痺において,定期的な評価データを後方視的に抽出し傾向スコアの算出からデータプールを構築した.データプールの構築は,急性期において課題とされる対照群を設定することができ,本研究データを多くの施設が共有することで,既存の介入や新たな介入成果について検討できると考えられる.本データの使用例として,今回の対象期間に病棟実施型CI療法を実施した群を介入群とし,傾向スコアマッチングを行った.その結果についても検討したので報告する.
著者
山本 勝仁 竹林 崇 高井 京子 徳田 和宏 細見 雅史
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.478-485, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
20

要旨:本試験は,脳卒中急性期脳卒中患者に対し,病棟での自主練習を含むmodified CI療法(以下,病棟実施型CI療法)が麻痺手の機能・行動に与える影響を調べることを目的に実施した.方法は,急性期脳卒中患者に対し,訓練室で行われる通常のmodified CI療法(以下,mCI療法)と病棟実施型CI療法が麻痺手の機能と使用行動に与える影響について,後ろ向きコホート試験で探索的に比較した.その結果,両群とも麻痺手の機能・行動は介入前後に有意に改善した.しかし,群間比較では,麻痺手の使用行動のみ,病棟実施型CI療法が,通常のmCI療法に比べ,有意に改善した.病棟実施型CI療法は,実生活の麻痺手の使用行動に影響を与える可能性がある.
著者
齋藤 佑樹 友利 幸之介 澤田 辰徳 大野 勘太
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.226-238, 2022-04-15 (Released:2022-04-15)
参考文献数
25

本研究の目的は,訪問リハビリテーションに従事し,対象者の活動・参加レベルの目標達成を支援している作業療法士が,臨床プロセスにおいてどのような経験や臨床判断を行っているのかを明らかにすることである.4名の作業療法士にインタビューを実施し,複線径路等至性アプローチ(TEA)にて分析を行ったところ,4名は介入初期において,①クライエントが作業の視点で生活を顧みることができるよう働きかけを行っていた.また目標設定の際は,②面接評価の時間を設け,クライエントと協働的に課題を焦点化するプロセスを重視しており,目標設定後は,訪問リハの利点・欠点を踏まえ,③柔軟に介入内容の選択を行っていた.
著者
石川 哲也 林 純子 友利 幸之介 長山 洋史
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.40, no.5, pp.572-580, 2021-10-15 (Released:2021-10-15)
参考文献数
31
被引用文献数
1

急性期における協働的目標設定の可否と,可否を決定する因子について検討した.対象は急性期病棟の入院患者104名で,初回面接でADOCを用いた目標設定を行い,困難な場合は理由を尋ね,途中経過で目標が再設定できるか追跡調査を実施した.結果,目標設定が可能な割合は初回面接で40%,途中経過で31%,退院まで困難が29%であった.目標設定の可否に影響する因子は,初回面接時にFIMが98点以上だと良好でMMSEが13点以下だと不良であり,初回面接時の目標設定が困難であってもその理由が能力認識の不足や見通しの希薄の場合は,途中経過で目標設定ができる可能性があることが示唆された.
著者
大西 正二 熊谷 恵子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.102-111, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
17

本症例は,読み書きに困難を認める小学3年の学習障害児であり,特に漢字の書きに対して拒否的だった.リハビリテーションアプローチのうち,Information and Communication Technology(ICT)を活用した環境改善的アプローチを優先した支援を通して,書字への拒否感が改善し,認知特性に合わせた適応的アプローチによる漢字の書字学習にも取り組めるようになった.また約2年間の継続した支援により,パソコンを使用したローマ字入力で,自分自身の特徴と求めたい支援についてまとめることができるようになった.しかし,学校側と具体的な連携には至らず,医療と教育との連携に課題が残った.
著者
竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.10-16, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
7

昨今,医療・介護領域でエビデンスに注目が集まっている.エビデンスとは証拠であり,正確な医療・介護を実施するためのフレームである.エビデンスに基づいたアプローチ(Evidence based practice)を行う際には,なくてはならないものである.しかしながら,リハビリテーション領域,特に作業療法の領域では,これらエビデンスの構築が遅れていると,団体内外から声が上がっているのが現状である.本稿では,その中でも比較的エビデンスが豊富な領域である作業療法における脳卒中後の上肢麻痺に関わるエビデンス構築の推移を,事例報告からランダム化比較試験まで記載した.
著者
小渕 浩平 務台 均 矢口 優夏 小宮山 貴也 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.279-288, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
25

急性期病床入院中の脳損傷者に対して,ドライビングシミュレーター(以下,DS)を用いた評価と,自動車運転再開・非再開の関係性を調査し,急性期病床におけるDSの下位検査項目のカットオフ値と予測精度を検討した.対象は,当院に入院した脳損傷者のうち,評価を完遂した88名であった.分析の結果,誤反応合計,発信停止合計,全般合計,判定得点合計でカットオフ値が算出され,3つ以上カットオフ値を上回った症例は,非再開となる精度が77%であった.また,決定木分析の結果から,神経心理学的検査を含めた複合的な判断が必要である一方,DS評価は急性期病床においても運転再開可否の判定に有用な可能性が示唆された.
著者
花田 恵介 空野 楓 河野 正志 竹林 崇 平山 和美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.118-126, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
20

右手動作の拙劣さと両手に道具把握の障害を呈した,左の前頭葉および頭頂側頭葉梗塞例を経験した.手指分離動作は十分可能で協調運動障害もなかった.しかし,右手での手指形態模倣や,衣服のボタン操作,手袋の操作が困難であった.さらに箸やスプーン,ハサミなどが,左右手ともうまく把握できなかった.この症状に対して右手の課題指向型訓練を14日間実施した.本例は道具を一旦正しく把握できれば,それ以降の使用動作は問題なく行えた.また,把握の誤りは,検査者が道具を手渡したり,一方の手でもう一方の手に道具を持たせたりすると少なくなった.この残存能力を生かして訓練を行ったところ,日常生活における右手の使用頻度が増加した.
著者
増田 雄亮 八重田 淳 會田 玉美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.68-79, 2023-02-15 (Released:2023-02-15)
参考文献数
42

【目的】本研究の目的は,日本の作業療法士を対象とした新しいEBP自己評価尺度(EBPSA)を開発することである.【方法】全国の回復期リハビリテーション病棟に勤務する作業療法士1,216名を対象として,質問紙による郵送調査を実施した.【結果】531名(回収率43.7%)から回答が得られ,このうち515名のデータを有効回答とした.因子分析の結果,4因子14項目が抽出され,モデル適合度は,CFI=.972,TLI=.965,RMSEA=.048であった.内的整合性の検討では,下位尺度および尺度全体のα係数はいずれも.80以上を示した.【結論】本研究において,良好な尺度特性を有するEBPSAが完成した.
著者
野口 卓也 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.54-63, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
28
被引用文献数
2

本研究の目的は,ポジティブ作業に根ざした実践のプログラム(POBP)を開発し,適用方法を検討することであった.研究方法は2段階の手順を踏み,手順1で作業に根ざした実践に精通する作業療法士3名で学習教材を作成し,手順2でPOBPを精神障害者6名に実施した.効果指標はポジティブ作業評価15項目版(APO-15),ポジティブ作業の等化評価(EAPO),一般性セルフ・エフィカシー尺度を用い,解析はベイズ推定による一般化線形混合モデルで行った結果,手順1で学習教材が33種類作成され,手順2でAPO-15のエンゲージメント,EAPOのポジティブ作業の2因子で効果を認めた.POBPは精神障害者の幸福の促進に寄与する可能性があると示された.
著者
米嶋 一善 武田 智徳 友利 幸之介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.640-655, 2022-12-15 (Released:2022-12-15)
参考文献数
56

内部障害の目標設定の状況と研究ギャップを特定するためにスコーピングレビューを実施した.全1114編のうち46編が対象となり,がん19編,心臓疾患16編,呼吸器疾患6編,腎臓疾患0編,複合疾患5編であった.作業療法領域,個別的で活動や参加に焦点を当てた目標設定に関する報告は少なかったが,がんを対象とした報告では比較的実施されていた.ただし,がん以外の領域で研究の必要性がないわけではなく,心臓疾患や呼吸器疾患でカナダ作業遂行測定(COPM)を用いた作業ニーズを調査する研究等が報告されており,今後本邦においても類似した研究の実施が求められる.
著者
川口 悠子 西川 可奈子 齋藤 佑樹 友利 幸之介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.309-318, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
41

作業選択意思決定支援ソフト(以下,ADOC)に関する既存の研究や実践報告をマッピングし,今後必要な研究領域の特定を目的に,スコーピングレビューを行った.4つの文献データベースと2学会の抄録集からADOCに関する報告を検索し,最終的に178編(論文49編,学会129編)を特定した.詳細は,量的研究38編(論文19編,学会19編),事例報告140編(論文30編,学会110編)であった.これらの研究および事例報告にて,ADOCの適用範囲が多岐にわたることが示唆された.一方,今後異文化妥当性ならびに介入研究の拡充,そして事例報告(特に脊椎・脊髄疾患,悪性腫瘍,認知症)の論文化の必要性が明らかとなった.
著者
川口 悠子 齋藤 佑樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.741-748, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
21

高次脳機能障害を呈した対象者に対し,Paper版ADOCを障害特性に考慮した工夫を加えて実施することで,対象者にとって意味のある作業の共有が可能となった.また,その結果をもとに多職種連携を行うことで,目標指向型の役割分担が可能となり,チーム全体で意味のある作業への介入が行えるようになった.対象者の症状や回復過程に合わせ,柔軟にADOCを使用することで,意味のある作業を共有できる対象者の幅が広がる可能性,また,ADOCを使用した情報共有が,多職種連携の促進につながる可能性が示唆された.
著者
田中 卓 竹林 崇 花田 恵介
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.86-93, 2022-02-15 (Released:2022-02-15)
参考文献数
23

今回,脳卒中後左片麻痺と左半側空間無視を伴う全般的認知機能障害を呈した事例に対して,病態に応じた工夫を施した麻痺手に対する複合的なアプローチ(病棟スタッフ主体のTransfer Packageや課題指向型アプローチ,電気・振動刺激)を実施した.結果,予後不良と考えられた事例において,臨床上意味のある最小変化量を超えた上肢機能の改善と,意味のある作業の達成が可能となった.さらに,半側空間無視も中等度の障害から軽度の障害への変化が見られた.回復期の介入のため,自然回復の影響は否めないが,本介入は認知機能低下を呈した事例に対する上肢機能アプローチにおける工夫として有用な可能性があると考えられた.
著者
髙野 大貴 寺岡 睦
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.358-364, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
13

作業に根ざした実践(Occupation-Based Practice 2.0:OBP 2.0)は,クライエントの作業機能障害を評価しつつ,それを取り巻く信念対立に対処していく方法論である.本報告では,地域在住で脳卒中後遺症を有するクライエントに対してOBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,訪問作業療法(訪問OT)におけるOBP 2.0の臨床有用性を検討した.その結果,作業機能障害の改善と生活機能の向上が見られ,作業療法士,家族とクライエントの間で生じた信念対立の解明が進んだ.OBP 2.0は,作業機能障害の改善に向けて訪問OTの方針の共有と,状況に応じ様々な方法の使用ができると考えられた.また,クライエントや周囲の人々と協業した訪問OTを促進できた.
著者
石垣 賢和 竹林 崇 前田 尚賜 髙橋 佑弥
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.6, pp.689-703, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
18

要旨:エビデンスレベルの高い介入研究を実施するためには,対照群を設定する必要があるが倫理的に容易ではない.本研究では,一般臨床のデータを後方視的に抽出することにより,214名の脳卒中後上肢麻痺における回復期の傾向スコア算出のためのデータプールを構築した.データの使用例として,過去に著者らが実施した,対照群を用いない前後比較試験のデータを介入群とした傾向スコアマッチングを行った結果についても併せて報告する.本研究のデータを多くの研究者や臨床家が対照群として使用することにより,臨床研究の質向上に貢献できると考える.
著者
塩津 裕康 倉澤 茂樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.17-25, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
37

本論では,自閉症スペクトラム障害児(以下,ASD児)に対する,より効果的な作業療法の開発に向けて,応用行動分析学(以下,ABA)を取り入れることを検討した.ABAは,強力なエビデンスを持つとともに,作業療法士はこれを適用するためのスキルを持っている.そのため,本論から我が国の作業療法士がABAを取り入れることを吟味し実践することで,ASD児に対する,より効果的な作業療法となることが期待される.
著者
高木 雅之 橋本 康太 坂本 千晶 池内 克馬 十樂 眞帆
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.353-360, 2023-06-15 (Released:2023-06-15)
参考文献数
13

地域在住高齢者6名に,作業の記録と対話を中心とした介護予防教室を実施した.その結果,参加者全員の高齢者向け生きがい感スケールと社会活動に関連する過ごし方満足度尺度の得点が向上した.また握力と30-seconds chair-stand testにおいても向上傾向がみられた.参加者の一人は,畑仕事,吊るし柿づくり,墓参りなど,多様な作業経験について記録・対話した.そして本事例は作業の計画や目標を持つ重要性に気づき,作業遂行が高まったと感じていた.これらのことから,作業についての記録と対話は,作業に対する気づきを促し,作業遂行を高め,生きがいや社会活動満足度,運動機能を向上させる可能性がある.
著者
塩津 裕康
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.344-350, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
5
被引用文献数
1

本報告の目的は,限られた介入頻度でも,Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(以下,CO-OP)を用いた介入の有用性を示すことである.方法は,2事例の事例報告で,介入はそれぞれ2回(約1ヵ月に1回)であり,その前後を比較した.結果は,CO-OPを用いることで,粗大運動および微細運動スキルどちらの課題でも,スキルを獲得することができた.さらに,最小限の介入頻度で,スキルの獲得およびスキルの般化,転移を導く可能性が示唆された.結論として,CO-OPの適応児の選定に検討の必要性はあるが,認知戦略を発見および使用できる子どもに対しては,有効である可能性が示された.