著者
竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.10-16, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
7

昨今,医療・介護領域でエビデンスに注目が集まっている.エビデンスとは証拠であり,正確な医療・介護を実施するためのフレームである.エビデンスに基づいたアプローチ(Evidence based practice)を行う際には,なくてはならないものである.しかしながら,リハビリテーション領域,特に作業療法の領域では,これらエビデンスの構築が遅れていると,団体内外から声が上がっているのが現状である.本稿では,その中でも比較的エビデンスが豊富な領域である作業療法における脳卒中後の上肢麻痺に関わるエビデンス構築の推移を,事例報告からランダム化比較試験まで記載した.
著者
花田 恵介 空野 楓 河野 正志 竹林 崇 平山 和美
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.118-126, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
20

右手動作の拙劣さと両手に道具把握の障害を呈した,左の前頭葉および頭頂側頭葉梗塞例を経験した.手指分離動作は十分可能で協調運動障害もなかった.しかし,右手での手指形態模倣や,衣服のボタン操作,手袋の操作が困難であった.さらに箸やスプーン,ハサミなどが,左右手ともうまく把握できなかった.この症状に対して右手の課題指向型訓練を14日間実施した.本例は道具を一旦正しく把握できれば,それ以降の使用動作は問題なく行えた.また,把握の誤りは,検査者が道具を手渡したり,一方の手でもう一方の手に道具を持たせたりすると少なくなった.この残存能力を生かして訓練を行ったところ,日常生活における右手の使用頻度が増加した.
著者
野口 卓也 京極 真
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.54-63, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
28

本研究の目的は,ポジティブ作業に根ざした実践のプログラム(POBP)を開発し,適用方法を検討することであった.研究方法は2段階の手順を踏み,手順1で作業に根ざした実践に精通する作業療法士3名で学習教材を作成し,手順2でPOBPを精神障害者6名に実施した.効果指標はポジティブ作業評価15項目版(APO-15),ポジティブ作業の等化評価(EAPO),一般性セルフ・エフィカシー尺度を用い,解析はベイズ推定による一般化線形混合モデルで行った結果,手順1で学習教材が33種類作成され,手順2でAPO-15のエンゲージメント,EAPOのポジティブ作業の2因子で効果を認めた.POBPは精神障害者の幸福の促進に寄与する可能性があると示された.
著者
髙野 大貴 寺岡 睦
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.358-364, 2019-06-15 (Released:2019-06-15)
参考文献数
13

作業に根ざした実践(Occupation-Based Practice 2.0:OBP 2.0)は,クライエントの作業機能障害を評価しつつ,それを取り巻く信念対立に対処していく方法論である.本報告では,地域在住で脳卒中後遺症を有するクライエントに対してOBP 2.0を用いた評価と介入を実施し,訪問作業療法(訪問OT)におけるOBP 2.0の臨床有用性を検討した.その結果,作業機能障害の改善と生活機能の向上が見られ,作業療法士,家族とクライエントの間で生じた信念対立の解明が進んだ.OBP 2.0は,作業機能障害の改善に向けて訪問OTの方針の共有と,状況に応じ様々な方法の使用ができると考えられた.また,クライエントや周囲の人々と協業した訪問OTを促進できた.
著者
籔脇 健司
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.259, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)

二項対立とは,「二つの概念が対立や矛盾の関係にあること.また,そうした対立概念によって世界を単純化して捉えること」を意味する(広辞苑 第7版).わが国の作業療法は,この二項対立であふれているように感じる.実践に目を向ければ,(要素)還元主義的か全体論的かの議論が古くからなされ,現在でも,機能か作業か,トップダウンかボトムアップか,evidence-basedかnarrative-basedかなど,視点はそれぞれ異なるものの作業療法の方針に関する話題となることが多い.研究に目を向けても,量的研究か質的研究か,実験的研究か記述的研究か,基礎研究か応用研究かなどの二項対立に遭遇することは少なくない.このような議論は,作業を用いて対象者の健康に寄与するという作業療法の専門性が,きわめて複雑で多様な特徴をもつことから引き起こされると考えられる.
著者
川口 悠子 齋藤 佑樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.741-748, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
21

高次脳機能障害を呈した対象者に対し,Paper版ADOCを障害特性に考慮した工夫を加えて実施することで,対象者にとって意味のある作業の共有が可能となった.また,その結果をもとに多職種連携を行うことで,目標指向型の役割分担が可能となり,チーム全体で意味のある作業への介入が行えるようになった.対象者の症状や回復過程に合わせ,柔軟にADOCを使用することで,意味のある作業を共有できる対象者の幅が広がる可能性,また,ADOCを使用した情報共有が,多職種連携の促進につながる可能性が示唆された.
著者
塩津 裕康 倉澤 茂樹
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.17-25, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
37

本論では,自閉症スペクトラム障害児(以下,ASD児)に対する,より効果的な作業療法の開発に向けて,応用行動分析学(以下,ABA)を取り入れることを検討した.ABAは,強力なエビデンスを持つとともに,作業療法士はこれを適用するためのスキルを持っている.そのため,本論から我が国の作業療法士がABAを取り入れることを吟味し実践することで,ASD児に対する,より効果的な作業療法となることが期待される.
著者
古桧山 建吾 京極 真 織田 靖史
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.180-189, 2020-04-15 (Released:2020-04-15)
参考文献数
23

本研究の目的は,信念対立を経験したリハビリテーション専門職がマインドフルネストレーニングを実践することでたどる主観的体験の変化と,リハビリテーション専門職の信念対立に対してマインドフルネストレーニングがどのような影響を与えるかを明らかにすることである.対象者は,8週間のマインドフルネストレーニングを実践した.質的研究で対象者の主観的体験の変化,量的研究でマインドフルネストレーニングの効果を検証した.結果,対象者の信念対立の心理的側面は改善するが,信念対立そのものは改善しなかった.以上から,信念対立の問題には,マインドフルネストレーニングと信念対立解明アプローチを併せて対応する必要があると考える.
著者
北村 新 宮本 礼子
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.45-53, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
29

本研究では,脳卒中片麻痺者12名を対象に,彼らが生活のなかで麻痺手の使用・不使用にいたる主観的体験をインタビュー調査により明らかにした.分析は,戈木版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた.結果,脳卒中片麻痺者は【麻痺を呈した身体での生活場面】のなかで,【麻痺手を使う必要性の実感】,【健側手で生活ができることの実感】,【意識的な麻痺手使用の試み】,【意識する他者の視線】という経験を通して,【麻痺手を使用する手段・場面の選択】と【麻痺手を使用しない手段・場面の選択】に帰結することがわかった.麻痺手使用を支援するうえで,対象者が行う作業の特性や,個人的意味づけを考慮した関わりが重要であると考える.
著者
河野 正志 寺田 萌 大松 聡子 富永 孝紀 村田 高穂
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.6, pp.727-735, 2019-12-15 (Released:2019-12-15)
参考文献数
13

重度失語症を呈した左半球損傷患者に対し,視覚探索訓練を実施した結果,コミュニケーション能力の向上が観察され,その評価として,画像視認中の視線分析を用いて検討したので報告する.発症3ヵ月後,コミュニケーション場面では,状況理解に必要な部分へ視線が向かず,非言語情報の理解の低下を認めた.視線分析では,視認中の視線の動きは乏しく,注視点は1ヵ所に停留する傾向を示した.視覚探索訓練を実施した結果,視線分析やコミュニケーション場面において視線の動きが増え,非言語情報の理解・表出の向上が観察された.視覚探索訓練により,非言語情報の入力過程に関わる視覚性注意の改善が寄与した可能性が考えられた.
著者
埴岡 大輝 竹林 崇 竹内 健太 島田 眞一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.333-340, 2020-06-15 (Released:2020-06-15)
参考文献数
25

Mirror Therapy(以下,MT)は,脳卒中後の上肢機能障害に対してエビデンスが示されてきた治療である.今回我々は,脳卒中による重度の上肢機能障害に対して,エビデンスが確立されている電気刺激療法やロボット療法などを複合的に実施したが,手指の随意伸展運動が全く出現しない症例を経験した.その症例に対して,回復期後期にMTを実施した結果,示指の随意伸展運動の改善を認め,麻痺手単独での課題指向型練習が可能となり,生活の一部で麻痺手を補助的に使用することが可能となった.MTの回復メカニズムに未だ不明な点はあるが,重度上肢機能障害に対するMTを併用した複合療法は,上肢機能の改善の一手段となる可能性がある.
著者
永井 貴士 石井 良和 市田 博子 小森 愛子 山田 孝
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.26-37, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
29

本研究の目的は,家族介護者の従事する「介護」という作業の構成概念を生成することである.要介護者と在宅介護生活を1年以上経験している家族介護者16名を対象に非構造化面接を実施し,SCAT(Step for Cording and Theorization)を用いて分析した.その結果,構成概念は102の意味コードが生成され,家族介護者の想い,介護する生活,介護と環境の3つの大カテゴリーが得られた.作業療法士は家族介護者の作業適応への支援として,これらの視点で検討する必要性が示唆された.
著者
横井 賀津志 藤井 有里 酒井 ひとみ
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.109-117, 2020-02-15 (Released:2020-02-15)
参考文献数
19

レビー小体型認知症の発症により,作業ができなくなり自分らしさを獲得できなくなったクライエントに対し,Person-Environment-Occupation Model of occupational performance(PEOモデル)を用い介入した.クライエントと作業療法士は作業ニーズを特定し,作業歴を紐解き作業分析を行い,人-環境-作業の適合を見極めるため,それぞれを個別に評価した上で作業遂行場面を観察したところ,作業形態と意味が満たされた.クライエントを主語に作業を基盤とした介入を実施した結果,人-環境-作業が最大限に適合し,クライエントは日記に「自分が生まれた感じがした」と表現する作業的存在を確認できた.さらに作業の力は,傾眠回数の減少にも寄与した.
著者
小渕 浩平 竹林 崇 松井 克明 村岡 尚 中村 裕一
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.497-504, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
19

学習性不使用による慢性期脳卒中後の上肢運動障害に対し,Constraint-induced movement therapy(以下,CI療法)の主要コンセプトであるTransfer packageを,外来作業療法にて実施した.低頻度(週1回20分)であったが,4ヵ月後には臨床上重要な最小変化を大きく超える,麻痺手の使用行動と上肢機能の改善を認めた.さらに,事例が目標とした活動の多くを獲得することができた.CI療法は,訓練時間や医療保険適応の問題が指摘されているが,事例の状態によっては,必要なコンセプトを中心に,低頻度の介入でも効果が得られる可能性が示唆された.
著者
田中 陽一 大住 倫弘 佐藤 剛介 森岡 周
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.117-122, 2019-02-15 (Released:2019-02-15)
参考文献数
21

地域在住の慢性疼痛症例に対し,疼痛強度の日内変動と日々の心理状態・身体活動量の調査を行った.症例は事故により右腕神経叢を損傷し,受傷以降右上肢に自発痛を有していた.14日間の調査の結果,疼痛の日内変動と身体活動量との関連では,低強度活動(家事や歩行などの立位を含む運動)が多いと疼痛強度が低下し,低強度活動が少ないと疼痛強度が増加する傾向が確認された.今回の低強度活動は,症例が日々の生活において重要度が高いと判断した「散歩」や「デイサービスの利用」などであることから,本人が重要と感じ,かつ低強度の運動時間を維持できる活動を行うことが,疼痛強度の低下に寄与したのではないかと考えられる.
著者
田中 寛之 永田 優馬 石丸 大貴 日垣 一男 西川 隆
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.4, pp.405-415, 2019-08-15 (Released:2019-08-15)
参考文献数
17

本研究の目的は,筆者らが開発したライフヒストリーカルテ(以下,LC)の導入による病院・施設職員(以下,スタッフ)の患者・利用者に関する理解度への影響を明らかにすることと,LCの利点と活用法を具体的に示すことである.患者・利用者に関する医療・介護者の理解尺度をLC導入前と導入1年後に実施し,さらに,スタッフにLCの利点と有用な活用法を自由記述してもらった.LCの導入による医療・介護者の患者理解度の改善はみられなかったが,「食思不振改善のヒントになった」などの自由記述から,多くの利点が明らかになった.
著者
佐藤 篤史 竹林 崇
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.230-237, 2019-04-15 (Released:2019-04-15)
参考文献数
13

脳卒中後手指伸展が出現しない事例に,実生活の麻痺手使用を促す目的で,カペナースプリント改良型を用いたCI療法を行った.方法は,先行研究で報告されたスパイダースプリントを併用し,亜急性期からCI療法を実施した.しかし,事例が日常生活における装具の使用を拒否したため,カペナースプリント改良型を開発し,使用した.介入前後で,Fugl-Meyer Assessment,Wolf Motor Function Test,Motor Activity Logが臨床上意味のある最小変化量を超えて改善した.さらに,福祉用具満足度評価は,スパイダースプリントよりもカペナースプリント改良型が良好であった.カペナースプリント改良型は,CI療法において有用な装具である可能性を認めた.