著者
南 舞 星野 亜由美 飯田 文子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】牛肉は産地、飼料等の違いで肉質や食味特性が異なる。中でも黒毛和種は他品種に比べ良い風味を持ち、それらが食味評価に強く寄与していることが明らかとなっている。しかし、官能評価の香りと香気成分との関連性をみることは困難であるため、本研究では的確で詳細に香り特性を捉えるパネリスト育成方法確立を目的とした。<br><br>【方法】1種の香気成分を用いた牛肉の香り識別訓練と、2種の似た香りとされる香気成分を用いた応用識別訓練を行った。各試料には、黒毛和種の香気成分として同定されている中から代表として、γ-Nonalactone, γ-Dodecanolactone, 2,5-Dimethylpyrazine, 2-ethyl-3,5-Dimethylpyrazine等計10種を用いた。2:5点試験法を行い、2回正解したものを合格とした。併せて、香りの言葉出しも行った。また、訓練前と、訓練後に行った官能評価における用語数を比較し、訓練効果を検証した。<br><br>【結果】牛肉の香り識別訓練では、パネリスト間の合格への過程が異なり、既知の閾値とは関係なく、パネリスト間での差が示唆された。また、訓練の言葉出しでは、γ-Nonalactoneはココナッツ様・桃様・杏仁様の香り、γ-Dodecanolactoneは桃様・パイナップル様・バター様の香り等10種類の香気成分のそれぞれに特有な用語が挙げられた。また、応用識別訓練では表現用語の統一性がより顕著になった。実際の黒毛和種官能評価の香りの言葉出しでは、抽象的であった用語が減り、より具体的な用語が増えた。以上、これら訓練方法は、香りを適格に評価できるパネリスト育成に有効であることが示された。