著者
今井 俊夫 西村 美由希 南木 敏宏 梅原 久範
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.131-139, 2005 (Released:2005-06-30)
参考文献数
54
被引用文献数
9 12

炎症や免疫反応は生体局所で生じることから明らかなように,免疫細胞の時空間的局在は緻密に制御されている.免疫細胞は細胞接着分子と細胞遊走因子を巧みに利用して,炎症部位やリンパ組織に到達する.フラクタルカイン/CX3CL1は,ケモカインと細胞接着分子の2つの活性を併せ持ち,活性化血管内皮細胞上に発現する細胞膜結合型ケモカインである.その受容体CX3CR1は,NK細胞やcytotoxic effector T細胞(TCE)などの細胞傷害性リンパ球と成熟マクロファージや粘膜樹状細胞などの病原体や異常な細胞の排除に深く関わる免疫細胞に発現している.最近の臨床病態やマウス疾患モデルでの研究から,フラクタルカインは,関節リウマチや粥状動脈硬化症などの慢性炎症疾患にも深く関与していることが示唆されている.本稿では,フラクタルカインの特徴的な機能と炎症疾患における役割について概説する.
著者
南木 敏宏
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.172-180, 2016 (Released:2016-06-17)
参考文献数
55
被引用文献数
17

ケモカインは細胞遊走に関わるサイトカイン様分子であり,炎症細胞の遊走により炎症性疾患に関わる.関節リウマチ(RA)の滑膜組織では多数のケモカイン発現がみられ,リンパ球,単球/マクロファージなどの炎症細胞浸潤,さらに,滑膜細胞の活性化,血管新生にも関与していると考えられている.これまでに,関節炎モデル動物ではCCL2, CCL3, CCL5, CCR1, CCR9, CXCL2, CXCL5, CXCL13, CXCL16, CXCR3, CXCR4, CXCR7, CX3CL1の阻害による関節炎抑制効果が報告されている.RA患者への投与も試みられており,CCR1阻害薬,抗CXCL10抗体による関節炎抑制が見られた.しかしながら,マクロファージやT細胞浸潤抑制が期待されたCCL2,CCR2,CCR5の阻害ではRAに効果は認めなかった.さらなる臨床試験の推進が期待される.