- 著者
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緒方 政則
川崎 貴士
南立 宏一郎
- 出版者
- 産業医科大学
- 雑誌
- 萌芽研究
- 巻号頁・発行日
- 2003
暑熱環境によるエンドトキシン(LPS)の感受性変化と致死率について興味深い結果が得られた。実験1.暑熱環境による致死率と体温変化エンドトキシン感受性マウス(C3H/HeN)とエンドトキシン非感受性マウス(C3H/Hej)の2群に分け、人工気象室にて、42℃、湿度50%で2から3時間飼育し、室温(27℃)に戻した。(結果)LPSに反応する遺伝子を有するC3H/HeNマウスとLPSには反応しない遺伝子を持つC3H/HeJマウスに暑熱環境下で熱暴露すると、C3H/HeJマウスが生存率を有意に改善した。この両群のマウスの熱暴露後の両群の直腸温を径時的に測定すると、両群ともに、体温上昇が急で、41℃以上の異常高体温に至ったマウスが死亡していることがわかった。また、41℃以上(異常高体温)と41℃未満(適応群)で熱暴露後の生死についてカイ二乗検定すると、有意に異常高体温が死に関与していることがわかった。これらの結果より、LPS遺伝子も生死に関与するが、異常高体温を引き起こす因子が生死に関与していることが推察された。実験2.暑熱環境によるエンドトキシン(LPS)の感受性変化エンドトキシン感受性マウス(C3H/HeN)を2群に分け、人工気象室にて、42℃、27℃の2群に分け、湿度50%で2時間飼育し、致死量以下および致死量のLPSを投与し、その後3日間、生死を観察した。(結果)42℃で2時間暑熱環境下に曝した後に、エンドトキシン(LPS)を投与すると、熱非暴露群に比べて、エンドトキシンの感受性が高まることがはじめて明らかにした。また、経時的にサイトカインであるIL-6,TNFを測定すると、TNFは両群ともに、有意な差は認めなかったが、IL-6は、熱暴露群の方が有意に高かった。