- 著者
-
原 知之
金澤 伸雄
- 出版者
- 日本皮膚科学会西部支部
- 雑誌
- 西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
- 巻号頁・発行日
- vol.80, no.4, pp.321-326, 2018-08-01 (Released:2018-11-09)
- 参考文献数
- 15
自己炎症性疾患とは,自己免疫応答や感染症を伴わないにもかかわらず炎症病態が反復持続する疾患であり,病態として自然免疫の制御異常が関わる。インフラマソーム異常症がその代表であるが,自己免疫疾患との境界に位置する I 型インターフェロン異常症の存在が近年注目を集めている。本稿では精神発達遅滞と凍瘡様皮疹を呈した兄弟例を紹介し,鑑別すべき疾患として I 型インターフェロン異常を伴う自己炎症性疾患である中條-西村症候群とその類縁疾患を挙げ,解説した。中條-西村症候群ではプロテアソームの誘導型サブユニットである PSMB8 遺伝子に,エカルディ・グティエール症候群では TREX1 遺伝子など核酸の処理や認識に関わる遺伝子に,スタンキーヴィッツ・イジドール症候群ではプロテアソーム調節因子の構成成分である PSMD12 遺伝子に変異を認める。プロテアソームはユビキチンにより標識された蛋白質を分解する巨大な酵素複合体であり,細胞周期制御,免疫応答,シグナル伝達といった様々な細胞機能にかかわる。その機能不全により,メカニズムは不明であるが,核酸応答シグナルが異常活性化した場合と同様に I 型インターフェロン異常を来し,2-5AS 活性を上昇させる。凍瘡様皮疹という特徴的な臨床症状からインターフェロン制御異常を想起し,有効な遺伝子解析によって患者の病因を明らかにすることにより,重要な創薬ターゲットとなる分子を発掘することが期待される。