著者
日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会 石井 則久 浅井 俊弥 朝比奈 昭彦 石河 晃 今村 英一 加藤 豊範 金澤 伸雄 久保田 由美子 黒須 一見 幸野 健 小茂田 昌代 関根 万里 田中 勝 谷口 裕子 常深 祐一郎 夏秋 優 廣田 孝司 牧上 久仁子 松田 知子 吉住 順子 四津 里英 和田 康夫
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.11, pp.2023-2048, 2015-10-20 (Released:2015-10-22)
参考文献数
185

Here, we present our new guideline for the diagnosis and treatment of scabies which we, the executive committee convened by the Japanese Dermatological Association, developed to ensure proper diagnosis and treatment of scabies in Japan. Approval of phenothrin topical use under the National Health Insurance in August 2014 has contributed to this action. Permethrin, a topical anti-scabietic medication belonging to the same pyrethroid group as phenothrin, is already in use worldwide. For making proper diagnosis of scabies, following three points should be taken into consideration: clinical findings, detection of the mite(s) (Sarcoptes scabiei var. hominis), and epidemiological findings. The diagnosis is confirmed when the mites or their eggs are identified by microscopy or by dermoscopy. As we now have a choice of phenothrin, the first line therapy for classical scabies is either topical phenothrin lotion or oral ivermectin. Second line for topical treatment is sulfur-containing ointments, crotamiton cream, or benzyl benzoate lotion. Gamma-BHC ointment is no more provided for clinical use. If the patient is immunosuppressed, the treatment option is still the same, but he or she should be followed up closely. If the symptoms persist, diagnosis and treatment must be reassessed. For hyperkeratotic (crusted) scabies and nail scabies, removal of thick scabs, cutting of nails, and occlusive dressing are required along with topical and/or oral treatments. It is important to apply topical anti-scabietic lotion/cream/ointment below the neck for classical scabies or to the whole body for hyperkeratotic scabies, including the hands, fingers and genitals. For children and elderlies, it is recommended to apply treatment to the whole body even in classical scabies. The dosage for ivermectin is a single oral administration of approximately 200 μg/kg body weight. It should be taken on an empty stomach with water. Administration of a second dose should be considered at one-week with new lesions and/or with detection of mites. Safety and effectiveness of combined treatment with topical and oral medications are not yet confirmed. Further assessment is needed. Taking preventative measures is as important as treating those infected. It is essential to educate patients and healthcare workers and conduct epidemiological studies to prevent further spread of the disease through effectively utilizing available resources including manpower, finance, logistics, and time. (Jpn J Dermatol 125: 2023-, 2015)
著者
金澤 伸雄
出版者
日本ハンセン病学会
雑誌
日本ハンセン病学会雑誌 (ISSN:13423681)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.107-113, 2017 (Released:2018-08-29)
参考文献数
30

ハンセン病はらい菌による感染症であるが、伝染病ではなく、むしろ宿主の免疫状態や反応によって病像が決まる「免疫病」とされる。同時に、「遺伝病」ではないが、宿主の遺伝的素因も大きく関与する。本稿では、免疫異常の病態を2つの「免疫ベクトル」で二次元的に展開し、筆者がこれまで経験してきたサルコイド様肉芽腫性病変を伴う原発性免疫不全症、遺伝性自己炎症性疾患であるブラウ症候群、鑑別が重要なサルコイドーシスなどとともに、類結核型とらい腫型のハンセン病をその平面上に位置付けることにより、これらの対比を明確にした。確かにハンセン病は先進国では消えゆく疾患であるかもしれないが、免疫学にかけがえのないモデルを提供し、その進歩に大きく寄与した。免疫抑制剤の進歩による再帰感染のリスクという新たな問題も出現し、現代においてなお、「古くて新しい」この疾患の存在意義は大きい。
著者
西口 麻奈 渡邊 有史 上中 智香子 古川 福実 小森 涼子 安井 昌彰 村田 顕也 伊東 秀文 立石 千晴 鶴田 大輔 石井 則久 金澤 伸雄
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.126, no.13, pp.2433-2439, 2016-12-20 (Released:2016-12-20)
参考文献数
14
被引用文献数
1

大阪府出身の74歳男性.65歳時に四肢の異常感覚が出現し,67歳頃から歩行困難となった.70歳時に顔面と四肢に環状・不整形の浸潤性紅斑が出現し,73歳時に皮膚病理所見と血中ACE高値からサルコイドーシスと診断され,以前から腎障害に対して内服していたプレドニゾロンを継続した.74歳時に当院神経内科に入院し多発性単神経炎と診断され,皮疹について当科紹介となった.兎眼を呈し,皮膚スメア検査と病理組織のFite染色にて多数のらい菌を認め,多菌型ハンセン病と診断した.多剤併用療法にてスメア菌量は減少したが,血中ACE値上昇を伴って皮疹と神経症状が徐々に悪化したため,1型らい反応と診断しプレドニゾロンを増量した.
著者
原 知之 金澤 伸雄
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.80, no.4, pp.321-326, 2018-08-01 (Released:2018-11-09)
参考文献数
15

自己炎症性疾患とは,自己免疫応答や感染症を伴わないにもかかわらず炎症病態が反復持続する疾患であり,病態として自然免疫の制御異常が関わる。インフラマソーム異常症がその代表であるが,自己免疫疾患との境界に位置する I 型インターフェロン異常症の存在が近年注目を集めている。本稿では精神発達遅滞と凍瘡様皮疹を呈した兄弟例を紹介し,鑑別すべき疾患として I 型インターフェロン異常を伴う自己炎症性疾患である中條-西村症候群とその類縁疾患を挙げ,解説した。中條-西村症候群ではプロテアソームの誘導型サブユニットである PSMB8 遺伝子に,エカルディ・グティエール症候群では TREX1 遺伝子など核酸の処理や認識に関わる遺伝子に,スタンキーヴィッツ・イジドール症候群ではプロテアソーム調節因子の構成成分である PSMD12 遺伝子に変異を認める。プロテアソームはユビキチンにより標識された蛋白質を分解する巨大な酵素複合体であり,細胞周期制御,免疫応答,シグナル伝達といった様々な細胞機能にかかわる。その機能不全により,メカニズムは不明であるが,核酸応答シグナルが異常活性化した場合と同様に I 型インターフェロン異常を来し,2-5AS 活性を上昇させる。凍瘡様皮疹という特徴的な臨床症状からインターフェロン制御異常を想起し,有効な遺伝子解析によって患者の病因を明らかにすることにより,重要な創薬ターゲットとなる分子を発掘することが期待される。
著者
金澤 伸雄
出版者
和歌山県立医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

稀少遺伝性自己炎症疾患の解析によって遺伝子変異に基づく炎症制御シグナル異常を同定し、難治性慢性炎症疾患における異常シグナルの関与を検知し病態解明やテーラーメード治療につなげることを目指し、PSMB8変異が同定された中條-西村症候群、新規IL36RN変異が同定された汎発性膿疱性乾癬、新規LIG4変異が同定された遅発型原発性免疫不全症などについて細胞機能異常の検索を行い、さらに新規遺伝性自己炎症疾患が疑われる症例についてエキソーム解析を行い予想されるシグナル異常の確認を進めた。当初の目標達成には至っていないが、遺伝性炎症疾患における炎症制御シグナル異常の解明が進み、今後の更なる展開が期待できる。
著者
金澤 伸雄 有馬 和彦 井田 弘明 吉浦 孝一郎 古川 福実
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.34, no.5, pp.388-400, 2011 (Released:2011-10-31)
参考文献数
44
被引用文献数
3 4

中條—西村症候群(ORPHA 2615, MIM 256040)は,幼小児期に凍瘡様皮疹で発症し,弛張熱や結節性紅斑様皮疹を伴いながら,次第に顔面・上肢を中心とした上半身のやせと拘縮を伴う長く節くれだった指趾が明らかになる特異な遺伝性炎症・消耗性疾患である.和歌山,大阪を中心とした関西と東北,関東地方に偏在し,30例近い報告がある.全国疫学調査で生存が確認された関西の10症例に加え,新規幼児例が和歌山で見出され,今後も増える可能性がある.長らく原因不明であったが,ホモ接合マッピングにより,免疫プロテアソームβ5iサブユニットをコードするPSMB8遺伝子のホモ変異が同定された.患者由来細胞,組織の検討により,本疾患ではプロテアソーム機能不全のためにユビキチン化,酸化蛋白質が蓄積することによって,p38 MAPK経路が過剰に活性化しIL-6が過剰に産生されることが示唆された.最近,欧米からもPSMB8遺伝子変異を伴う類症が報告され,遺伝性自己炎症疾患の新たなカテゴリーであるプロテアソーム不全症が世界に分布することが明らかになりつつある.
著者
谷 冴香 三木田 直哉 古川 福実 金澤 伸雄
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.125, no.1, pp.97-100, 2015-01-20 (Released:2015-01-20)
参考文献数
11

抗精神病薬や抗菌薬にて薬疹の既往がある57歳女性.市販の鼻炎薬Aを内服した翌日より全身に発熱を伴う発疹が出現した.抗ヒスタミン薬内服とステロイド外用開始後も症状は増悪し,顔面腫脹も出現した.尿と画像所見から尿路感染が疑われ,抗菌薬とステロイドの全身投与により皮疹,尿路所見ともに軽快した.薬剤リンパ球刺激試験とパッチテストにて鼻炎薬Aとその成分のベラドンナ総アルカロイドが陽性を示した.ベラドンナ総アルカロイドは各種市販薬に含まれるが,同様の報告はこれまでになく,注意が必要である.
著者
稲葉 豊 金澤 伸雄 古川 福実
出版者
Meeting of Osaka Dermatological Association/Meeting of Keiji Dermatological Association
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.26-30, 2013

34歳,女性。頭痛に対して鎮痛薬を使用したところ口唇の腫脹を生じた。数ヶ月後に別の鎮痛薬を使用したところ,上下口唇と手背の水疱および手指の紅斑を生じ,色素沈着を残した。両薬剤に共通な成分であるアリルイソプロピルアセチル尿素 (Allylisopropylacetylurea,AIAU),イブプロフェン,無水カフェインのいずれかによる固定薬疹を疑い,これらの成分に対して無疹部でのクローズドパッチテストを行ったがすべて陰性であった。そのため上下口唇の色素沈着部に AIAU とイブプロフェンをそれぞれ20%含有するワセリンを単純塗布すると,5分後に紅斑が出現した。また無水カフェインの口唇色素沈着部への,AIAU の手背色素沈着部への単純塗布はそれぞれ陰性であった。本症例は皮膚粘膜移行部の固定薬疹であり,同部でのオープンパッチテストは結果が早く得られ,安全で有用性の高い検査法であった。(皮膚の科学,12: 26-30, 2013)