著者
原岡 文子
出版者
日本文学協会
雑誌
日本文学 (ISSN:03869903)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.11-20, 2010

『源氏物語』には例えば鮮烈な「子ども」像を焼き付ける紫の上が刻まれた。一方実は既に様々な子どもたちの姿が溢れる『うつほ物語』の存在は見逃せまい。僅か五歳の幼さで母の食を養うあどけなくも切ない「孝」を描かれる主人公仲忠の、末尾楼の上下の巻での幼いいぬ宮への秘琴伝授で閉じられる琴の家の物語をはじめ、「孝」「親子の恩愛」は『うつほ物語』を大きく貫くものであった。本稿は『うつほ物語』に溢れる子どもたちの姿の、『源氏物語』における継承と変容の考察の試みである。